どの季節にもある、香住の魅力に触れられる場所に

「さだ助」「KAN=ICHI」松下弘行さん
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香住浜海水浴場近くにある、アメリカのポートランドのような空間、「KAN=ICHI」。お土産にも最適なライフスタイルショップと、新鮮な香美町の味覚を味わえるレストランスペースは、いつも観光のお客さまで賑わっています。「KAN=ICHI」を立ち上げた香住出身の松下弘行さんに、海と暮らす香住の魅力をお伺いしました。

観光の仕事を手伝ってきた子ども時代を経て

松下さんのお祖父さんの代までは、家業は農業中心でした。時代の流れと共に観光業にシフト、お父様が海の家と民宿を開設。松下さんは、海と共に観光の仕事に励むご両親の姿を間近に見て育ち、子どものころからお仕事のお手伝いをしてきたと言います。
「お友達は休みの日にいろんなところに行っているのに、私だけは海の家のボート番。他の子のように遊べないというコンプレックスは常にありました」

(KAN=ICHI ライフスタイルショップ)

高校卒業後、外の世界を見てみたいと、松下さんは旅に出ました。沖縄で3か月間、アルバイトをしながら暮らしたり、高校時代から好きだった波乗りの仲間たちと四国や九州を旅行したり。旅の経験を経て、松下さんは一つの気付きを得ました。
「様々なお店に行き、それまでになかった発想が出てきました。お店という箱があればいいのではなく、デザインが本当に大切だと知りました」
(さだ助 外観)
先代から受け継いだ旅館「さだ助」の建て替えを、30歳の時におこないました。昔ながらの、ふすま一枚で仕切られていた客室や、フロントのない会計スタイルから、プライバシーが保護されるよう客室をトイレ付にし、従業員もおそろいの作務衣を着せるなど、当時の香住の観光としては最先端の試みでした。
(さだ助 フロント)
(さだ助 大浴場)

「KAN=ICHI」で新たな挑戦を広げる

旅館の経営だけでなく、レストラン・ライフスタイルショップをオープンしたのは、より多くの人に気軽に香住に来てもらうためでした。「それまでは日帰りで、香住の美味しいものを食べられる場所が少なかった。お客さまが来られた時に、案内できるような場所になれば」。お客さまに新鮮な海の幸を提供するため、店主の松下さん自ら早朝競りに出ます。それらをすべて「KAN=ICHI」にてお刺身や干物、魚料理として、安心安全に加工しています。「新鮮な『ほんまもん』の海の幸だからこそ、ストレートに、豪快にシンプルに召し上がっていただきたいです。島国日本人として魚介の美味しさを知り、もっと親しんでいただけたら」と、香住の魅力を伝えることに、松下さんは熱意を見せます。
(干物の加工場にて 松下弘行さん)

香住と言えば、カニというイメージが強く、4月からは観光客が減ってしまいます。でも実は、4月以降も香住には様々な自然の恵み、味覚があります。4月からはのどぐろ、6月からは活イカ、夏の岩ガキも絶品で、岩ガキ漁の様子は「KAN=ICHI」からも見ることができます。「冬だけでない、春から秋の香住の魅力を多くの人にぜひ知ってもらいたい」という思いで、様々な発想を形にしている松下さん。
缶詰作り、干物作りの体験や、地引網を引く体験は、観光客だけでなく、地元の小学校や商工会等の団体にも利用してもらえたらと考えています。また、2018年初夏からは自然環境の中でホテルのような快適なサービスが受けられる、新しいキャンプスタイルとして注目されている「グランピング」も開始予定。より多くの人に香住に訪れてもらうために日々アイディアを形にしていきます。
「同じようなお店をするなら、都会の方が経営的には楽ですが、そうしたら香住に来てもらえなくなる。ここが、香住に来る目的の一つになってもらえたらうれしい」
近隣市外からも気軽に来てもらえるスペースになればという思いが「KAN=ICHI」に込められています。
(朝とれ魚魚魚(ギョギョギョ)ランチ。新鮮な魚介のお造りがメイン)
(旬の魚介の干物をメインにしたランチも女性に人気)

香住の一番の「課題」に向き合うために

「KAN=ICHI」と「さだ助」両方の経営に携わり、日々大忙しの松下さんですが、それだけではなく代々受け継いできた農業にも携わっています。「日本人の丹精込めてものづくりをするという気持ちの基本にあるものは、やはり農業だと思っています。心の中にあるものづくりの気持ちを大切にするために、農業は続けていきたい」。自家製のお米は都度都度精米され「KAN=ICHI」や「さだ助」で提供され、お客さまにも好評です。
松下さんが香住に人を呼ぶために頑張る、その原動力は何でしょうか。
「海は見ているだけで心が穏やかになり、日々表情が違うという魅力があります。灯台から見える漁火など、魅力的な風景も、美味しい食べ物もたくさんあります。従業員にはよく、自分のゲストを招くつもりでお客様と接してほしいと伝えていますし、そのために研修や地元の魅力を知る機会も設けています」


その一方で課題に感じていることは、人手不足。「特に25歳くらいまでの女性は少なく感じています。求人を出してもあまり来られないので、若い方が香美町に増えて、観光を盛り上げてくれたらと願っています」。香美町にある若い力を、人を呼ぶ力に変えていけるためできることを探る松下さん。ほんまもんの魅力を知り、外に伝えていける力を求めています。

KAN-ICHI

〒669-6546
兵庫県美方郡香美町香住区七日市308
TEL.0796-39-1147
FAX.0796-39-1047
E-mail kanichi@dolphin.ocn.ne.jp

営業時間
レストラン
ランチ 11:00~14:30
ディナー 17:30~21:00 ※要予約
ライフスタイルショップ
9:00~17:00

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