23-24冬 雪が降らない! 

2025.01.27

       

スキー場休業、23年ぶりの雪乞い神事

※この記事は昨シーズンの冬についての内容です。

 

さあ、今年の冬も、めいっぱい働くぞ。

気合いはじゅうぶんです。

 

……そんな文面で締めくくった2023年秋の「暮らしを綴る」。(2023秋 ハチ北の秋は、文化の秋? – 香美町移住定住ガイド

ところが23-24シーズンの冬はなかなか雪が降らずスキー場も休業、実質スノーシーズンで生計を立てているハチ北にとっては苦しいシーズンとなった。

(24-25シーズンの今冬は雪もたくさん降っていい感じです!)

ハチ北はやはりスキー場の村だ。

12月になると、少しずつ村が活気づいてゆくのを感じる。

車の出入りも多くなり、村全体がそわそわと浮き足立っている。

 

12月23日のシーズンインを前に、12月17日にはどっさりと雪が降り積もった。

期待感バッチリで迎えた23-24シーズン。

順調なスタートを切ったかに見えたハチ北だったが、徐々に雲行きがあやしくなってきた。

スキー場のオープン以降、なかなか雪が降らないのだった。

その上気温も下がらず、どんどん溶けてゆく雪、なぜか兵庫を避ける雪。

スキー場は、毎日「明日の営業ができるかわからない、雪次第」という状況だ。

ゲレンデ維持にあたる職員の方は、寝る間も惜しんで調整を行っている。

新たに雪が降らないため、コースを維持するために営業時間を短縮した上、毎朝早くに周辺から雪上車で雪を集めてコースを作っているらしい。

また、気温が高いため、夜中に気温が下がるとようやく降雪機を動かすことができるのだという。

 

冬のあいだ働かせていただいている「ハチ北温泉 湯治の郷」もなかなか客足が伸びず、今年は見知った顔の来客も多い。

ふだんならこの時期忙しくてゆっくりする余裕などあるわけがない旅館街の方々が顔を出してくれているのだった。

本来なら一度めのピークを迎えるはずの年末も例によって伸び悩み、入客を予定して仕入れた食品のロスなども問題になっているという。

 

大晦日にはハチ北温泉で働いたあと、旅館街の旅館「SASAYA」のバーに集まって年越しをした。

飲んでいるうちに徐々に人が集まってくる。

「こんなにゆっくりできる年末は初めて」と誰かが言っていた。

 

カウントダウンを終え、小雨が降っているなか近所の太田神社へ初詣にゆく。

社殿では御神酒を持った区長と役員の方が待ち構えていた。

いただいた御神酒を飲み、社殿をぐるり、御神酒を飲みぐるり、また飲んでぐるり。三周するらしい。

みんなで「どうか雪が降りますように」と手を合わせた。

年が明けても状況は変わらず、なかなか雪は降らない。

毎日天気とにらめっこしながら、明日はどうか、明日はどうかと調整してゆくしかない。

1月3日、とうとう翌4日からのハチ北高原スキー場休業が決定。

4日朝には引き続き5日以降の休業も決定した。

週末には再開するといいなとぼんやり思っていると、昼過ぎにとつぜんハチ北観光協会の方が家にやってきて、「こんなときにこそ何かしないとだめだと思う」と言った。

そして、ハチ北高原でこの秋に採れた「とちの実」を使ってとち餅を作り、とち餅ぜんざいを振る舞おうと思っているという話をしてくれた。

これから各所に交渉に行くらしい。パワーがすごい。

この行動力が、今のハチ北を支える一つの大きな力になっているんだなとつくづく感じる。 

 

そういうことで、翌日5日は朝から住民はハチ北温泉に集まりおとなからこどもまで皆でとち餅作り。

もちもちあちちのとち餅がたくさんできました。

また、23年ぶりの雪乞い神事も行われることが決定し、1月6日には朝から龍宮神社で雪乞いの神事が行われた。

どうか雪が降りますようにと関係者一同が手を合わす。

神事のあとには、ハチ北産のとちの実ともち米を使ったとち餅と、雪をイメージした白いお餅が入ったぜんざいがハチ北温泉 湯治の郷にてふるまわれた。

雪とハチ北は切っても切れない関係。これからもどうか仲良くしていただきたいものだ。

雪乞い神事の様子は各メディアでも取り上げられ、後日京都の友人から、テレビのニュースを見たと写真が送られてきた。

そこにはカメラを持って神事の向こう側でウロウロとしている私がばっちり映り込んでいた。

 

雪乞い神事のおかげか1月8日には雪も降り、スキー場は無事営業を再開することができた。

5日ぶりにたくさんの方々がゲレンデを滑走され、100食限定で無料ふるまいをさせていただいたとち餅ぜんざいもあっというまに完売したようだ。

終わってみると、23-24シーズンは全国的な暖冬となった。

但馬のスキー場としても、雪不足で管内スキー場の半数以上が1月下旬まで一時休業などの対応を求められることになり、その後はまとまった降雪があり営業を再開したスキー場もあったが2月中旬以降は気温の高い状態が続き融雪が進んだため、例年より営業日数が1カ月以上短いスキー場が相次ぎ、昭和60年の統計開始以降、記録的暖冬であった令和元年度に次いで2番目に低い入込数となったという。

 

ところで、今年はたくさん降りそうだという話をちらほら聞く。(2024年10月現在)

皆どこでそういう判断をしているんだろう。

降るといいな、たくさん人が来てくれるといいな、という気分で雪の話を聞けるようになり、私もまたすこし、ハチ北の住民に近づくことができただろうか。

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