一目惚れした小代の物件、自由な暮らし発信の場に改装中

坂原義浩さかはらよしひろさん
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2019年、「WONDERKAMI」の空き家バンクに掲載された物件に一目惚れ、小代区佐坊の古民家を即決購入した坂原義浩さん。現在坂原さんは自らユンボを操り、床を剥がして大正13年の古民家リノベーションに精を出しています。坂原さんのこれまでの歩みと、この場所で描く展望についてお話を伺いました。

 

「やりたいことはぜんぶやる」自由に楽しく生きる大人の姿


(坂原義浩さん)

 

坂原さんの生まれは大阪・生野。田舎暮らしとは縁のない暮らしでしたが、祖父と一緒に山遊びをする時間は、幼い頃の楽しい記憶だったと語ります。「やりたいことはぜんぶやりたい」が信条の坂原さん。子どもの頃から車いじりが大好きで、高校卒業後は自動車の整備士として働き始めました。「給料は安かったけど、楽しくて好きな仕事やった。でもそこにお客さんとして建築会社の社長がやってきて」社長の話に惹かれ、建築関係へと職替え。資格も取得し、たくさんの建物の建築や増改築に関わってきました。その時の経験が今のリノベーションにも活きています。

「そのうちにだんだん、雑貨屋をやりたいと思うようになり」物件を借りて自らの手でリノベーションし、大阪府八尾市に雑貨屋さん「自遊本舗」をオープン。雑貨屋さんでは流木やシーグラスなどをアレンジしたものや照明も販売。その屋号にもあるように自由に楽しく経営してきたところ、常連だった大学生がアルバイトに入り、そのまま「ここで好きなことやらせてもらいます」と就職。坂原さん自身も、雑貨屋さんの他にもどんどん「やりたいこと」が生まれてゆき、次々に新しい事業を始めていきました。

「今、全体的にはどんなことをしているんですか」という質問には、居酒屋から菓子製造業、パッケージデザインと様々なキーワードが飛び出します。いくつもの顔を持つ暮らしは忙しそうですが、頭の中に項目ごとに整然とファイルが分かれているような状態で、モードチェンジはお手の物だとか。ここ数年は、「自然、田舎、古民家」をキーワードに新たな拠点を探し続けてきました。奈良県吉野郡天川村でたこ焼き屋さんを開いたり、和歌山の白浜近くで古民家を購入してリノベーションし、民泊をしたり。その中でも坂原さんがひときわ気に入っているのがここ、香美町小代区佐坊の物件だといいます。

 

一目惚れした小代区佐坊の古民家で、夢は更に広がる

小代区佐坊の古民家について、坂原さんはこう話しています。

「こんな太い柱に大きな梁。こんなすごい物件はなかなかない。古民家と言っても、途中でリフォームして新建材を使っている物件もあるが、ここは大正時代に建てられたままの状態で残っている。立派な蔵もあるし、ここでやりたいことがいっぱいある」

インターネットで香美町空き家バンクのこの物件を見たそのときにはもう電話を手にしていたという坂原さん。「誰にも取られたくなかったから、次の日にでも見たいと伝えて」実際に来ると、もうこの場所で叶えたい夢のイメージが次々浮かんできたと言います。

かつて牛小屋だったスペースをカフェに改装し、見晴らしの良い高台部分にはロッジを作ってバーベキュースペースに。隣の大きな農機具置き場はお客様のくつろいでいただけるスペースに改装し、立派な蔵はアコースティックライブができるようなスタジオに。

「カフェやロッジができたら、村の人の憩いの場にもなったらいいし、都会から若い子を呼んで、こんな絶景があるということや、こういう暮らし方があるということを伝えたい。もし空き家に住むことに興味があるなら、リノベーションはなんぼでも教えるから」

自然の中だからこそできる自由に遊ぶような生き方を、来て見て体感できるような場所にしたいと、坂原さんは考えています。

 

生かしてもらった命に感謝して、夢へと突き進む


(改装後は、窓から見える景色も楽しんでほしいと話す坂原さん)

さて、インターネットで見つけた物件をきっかけに小代区に移住した坂原さん。親類も知人もいないこの土地で住むにあたって、心がけていたことがあります。

「地域の人も、知らない人が来て、工事やリノベーションを始めたら不安やと思う。迷惑をかけることもあるから、積極的にこっちからコミュニケーションをとってきた。こっちがとじこもってたら余計不安にさせてしまうから、知らない人でもとにかく元気に挨拶して」

村の人も親切な人ばかりで、声掛けをしてくれたり野菜を持ってきてくれたりと温かいコミュニケーションが続いています。傾斜のある小代区佐坊で暮らしてきた村の高齢者は、年をとっても元気いっぱい。鍬を抱えてスタスタと傾斜を登っていく姿に、「僕も負けてられへん」と刺激をもらう日々だそうです。

古民家改装からカフェ開店へ向け、村の人からは「オープンしたら行くわ」と声をかけてもらえています。地域からも見守られ、夢は大きく広がりますが、「やりたいことがありすぎてなかなか進まへん」とのこと。特に昨年ユンボで事故に遭い、長期入院したこともあって計画は大きく遅れているのだそうです。「でも、心肺停止だった自分を、この村の人が助けてくれて生き返った。せっかく生かしてもらえたんだからできることを精一杯楽しみたい」と、日々大工仕事に勤しんでいます。精力的に楽しむ坂原さんに大変なことはないかと聞くと、「大変なことはといわれたら、大変なことばかり。でも、大変でええねん。大変だから目の前にやることがあって時間がつぶれる。それでええねん」。常に目の前のことに向き合い、取り組み続けることでいつか思いが花開く。与えられた命を存分に楽しみながら、坂原さんは夢の実現に向け、日々「大変だけど楽しいこと」を積み重ねていきます。

 

 

 

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