
今年の9月、香住に新しい宿泊施設「The Sanaton(サナトン)」がOPENします。
フィンランド語で「言葉を失うほどの感動」を意味するSanatonは、
目の前に広がる香住の海、海産物や自家製米、地元産の野菜を存分に味わえるお料理、
そして人とのつながりや暮らしなど香住の自然や文化を丸ごと体験できる複合施設。
帰ってからも思い出してもらえるような、その人の人生に入り込むようなそんな場所を目指して
「The Sanaton」の開業準備を進めている松下孝樹さんにお話をお聞かせいただきました。

結婚を機に香美町へ
山形の地元で消防士として働いていた松下さん。
ご友人と旅行に来ていた大阪で、たまたまのご縁で奥さまと出会い、一目惚れからお付き合いが始まります。
奥さまのお父さまは30年以上続く「旅館民宿 さだ助」、そして、レストランやお土産で人気の「KAN-ICHI」を経営されており、
結婚を考える際にはその家業を手伝う形となります。
松下さんにとって、消防士のお仕事は高校生の頃からの夢でした。
努力の上に夢を叶え、レスキュー隊を目指して救急隊、そして、水難救助隊と経験を積み、次のステップへ着実に歩んでいる最中でした。
家族や友達もみんな山形にいる中で、従来憧れていた職業とは程遠い旅館業の仕事をすることに、
最初は迷いや葛藤もたくさんありました。
そんな中、遠距離恋愛の彼女に会うため、香住の地に足を運び、「さだ助」に泊まらせてもらったり、農業のお手伝いをしたりしているうちに、考え方が少しずつ変化していきます。
汗をかいて土を耕し、大自然を体中で感じた後の漁師町のご飯の美味しさ。
そして、旅館の「さだ助」では笑顔で迎え入れられ、楽しい思い出となるよう一挙一動プロの仕事をするスタッフの姿。
困っている人を助ける消防のお仕事に対して、
旅館業のお仕事は、日常にプラスして感動を与える仕事なのだと感銘を受けます。
そうして、26歳で結婚を決断し、それを機に香美町での暮らしが始まります。
今から10年ほど前のことでした。

旅館業の世界で経営者へのステップを歩む
奥さまのご実家の家業をお手伝いすることになり、最初は「さだ助」のフロント業務からスタートします。
仕事も覚えてきて2年目に入った頃、自分のやりたいことに挑戦する機会をいただきます。
「KAN-ICHI」の管理棟の隣に小規模のグランピング施設を作り営業を開始します。
ところが、シーズンや気温にとても影響を受ける営業スタイルではなかなか投資資金の回収が難しく、
また、旅館業の最高のホスピタリティを基準としてみるとお客様に最適な環境を提供できているのか、なかなか自分自身の納得がいかず、
松下さんにとっては苦い勉強の経験となりました。
そうして、少しずつ経営感覚を学び、またお義父さまが少し病気をされ入院された際に、食材の仲買や農業も1人で任される経験も経て、経営者としての意識も育まれていきます。
香美町での暮らしが5年程経った頃、「さだ助」の隣にあった空き家を改造し、ハイクラス層に向けた「さだ助 別邸 ICHIJO」をOPENします。
旅館業において、デザインの考え方を取り入れ設計されることはあまり多くありませんが、松下さんだけでなくお義父さまもデザイン面はとても大切にされています。
大阪のデザイナーさんで、しっかりと寄り添い設計をしてくれる方と出会い、「ICHIJO」のグランドオープン、「さだ助」のリニューアルオープンを行います。「The Sanaton」も同じデザイナーさんのデザインです。
「ICHIJO」では、最初は好きなものを好きなだけ食べていただけるビュッフェスタイルでお食事を提供していました。
しかし、全国から来られるお客さまの声に耳を傾ける中で、セルフサービスの食事スタイルよりも、ここにしかないものを自信を持って提供するフルサービスのスタイルに価値があることを感じるようになり、シフトチェンジをします。
そうして1人1人のお客さまと向き合い、試行錯誤を重ねる中で、高い評価をいただける旅館へと成長を続けています。

香住を丸ごと体感する施設「The Sanaton」
そうした経験を通じて、松下さんが感じる旅館業の可能性はとても大きなものになっていきます。
「The Sanaton」は海や風、景色や食、人とのつながりなど、香住の自然や文化、魅力を体中で感じ、
忙しい日常から離れ、人生に感じる心を取り戻すための複合施設。
プライベートな空間と交流の空間、光や音や景色、食事やお風呂など至る所に工夫を感じ、ゆっくりと滞在できる素敵でお洒落な場所となっています。


子ども時代の思い出としても、日頃一生懸命働いている大人の方も、人生の節目のお祝いにも、来て楽しんでもらうだけでなく、帰ってからもその時の瞬間が思い出されるような、その人の人生になんらかの影響を与えるような、そんな滞在を提供したい。
宿泊業としての究極形を求めて、一期目の工事を終え、9月のグランドオープンの後の計画も、二期目、三期目と構想されています。
年々、香住でも高齢化や担い手不足により旅館業の軒数は少しずつ減ってきてしまっています。
松下さんを含め、何名かの若い経営者たちで若旦那の集まりを催し、自分たちがこんな楽しそうなことをやっている、こんなかっこいいことをやっている、そんな姿を見せ、そして実際にたくさんのお客さんを呼べるような工夫を重ね、新たに宿泊業をやりたいと考える人が増えるといいなと考えられています。
「The Sanaton」はそんな成功例となるため、先陣切ってチャレンジをされているのだと松下さんは話します。

子どもや若者が憧れを持ち、この町で働き、100年後も活き活きとした地域へ
この町が好きで、この町のことを理解して、この町で働きたい。そんな人たちが増えてほしい。
それが松下さんの想いです。
そうすることで、人口減少が進んだとしても、100年後も元気な地域でいられることにつながります。
「かっこいい」「やってみたい」そんな憧れとやりがいを持って働ける場をつくり、給与体系や休暇制度などの労働環境も整える。
都会の賃金と比べられるだけではなく、ここに残って働きたい人が増えたり、外から来て働く人が増えていく。
また、「The Sanaton」を訪れた人が香住の魅力を感じ、地域のお店や人との出会いを楽しむ。そんな滞在の循環をつくっています。
インバウンドを狙った施策を考えるよりも、一つ一つの宿やお店が連携し、近くの人が本当に来たいと思える場所をつくる。
そうして全国の人に香住の魅力が伝わり、それが世界にも通ずる地域となる。
「こんなことができるんだ」「自分も何か始めてみたい」新しい挑戦をする人が増え、小さなお店でも、カフェでも、体験でもそれぞれが自分らしい形で挑戦し、この町の魅力を発信していく。
そんな未来を松下さんは思い描いています。

消防士として人の命を守る道を歩んできた松下さんは、
今、宿という場所を通して、人の笑顔を増やし、世の中の役に立っています。
今年9月にグランドオープンを迎える「The Sanaton」。
香美町という地域の魅力を丸ごと体感し、この町を好きになるきっかけとなる場所。
そして、この町で新しい挑戦が生まれ続ける未来への第一歩となる場所なのかもしれません。
The Sanaton
https://thesanaton.com/
なごみの香風の宿「さだ助」
https://www.sadasuke.com/
さだ助別邸ICHIJO
https://ichi-jo.com/

.jpg)





