皆が健康で元気でいられるよう低糖質お菓子に願いを込めて

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香住区の柴山にある入江の目の前に、低糖質お菓子の専門店loving(ラビング)が佇んでいます。

週に2回、木曜日と日曜日にOPENされているこちらのお店には、近隣から手土産やおやつをお買い求めに来られる方、遠方から低糖質のお菓子を求めて来られる方など、次から次へとお客さまが訪れます。

お菓子を作り、販売されているのはlovingの店主、田淵香苗さん。
ご両親が経営されていた水産加工のお店の跡地を活用し、香住から健康と愛に溢れた世の中を目指して2年前にOPENしました。今回は病気を経験して苦しんだ経験からlovingをオープンする決意やこれからのlovingについてお話を伺いました。

歌のお姉さんに憧れていた香苗さんは、声楽を学ぼうと大阪の大学に進学しました。

しかし、在学中に体を壊してしまい、香住に戻ることになりました。
香住に戻り、ご両親の水産加工のお仕事をお手伝いしていた香苗さんは、「長靴を履いて蟹のセリに出たりもしていました」と笑います。

その後、神主をされている旦那さんとはボランティア活動で知り合い、隣の地区の神社にお嫁に行くことになりました。

神社の嫁としての日々は大変なことも多かったそうです。
妊娠してお子さんを授かってからは強い母親になりたいとの思いで、化粧品代理店の仕事を始められました。
元々は香苗さんのお母さまが水産加工の仕事をしながら知人に化粧品を販売していたそうです。それを受け継いで33年間仕事を続け、「この化粧品でないと」と言ってくださるお客さまが今でもおられるそうです。

子供が好きで歌のお姉さんに憧れていた夢は、大学で体を壊し辞めて帰ってきた時に諦めることとなりましたが、香住に帰ってきてから憧れていた仕事が小料理屋の女将さんです。
料理が好きで台所に立つことはちっとも苦ではなく、お菓子作りも趣味として楽しく行っていました。

そして、44歳の時、人生が一変する出来事が起こります。
乳癌が見つかり、手術と治療が始まりました。お医者さんから食事についてアドバイスをいただき、それまでストレス発散のために食べていたお菓子やパンなど甘いものは控えるようになり、玄米や野菜を中心とした食事を摂ったり、運動を行ったりと日々の生活を見直しました。

しかし、一度は完治した乳癌ですが、8年後に再発を宣告されます。
香苗さんは治療の副作用が強く出てしまう体質で、苦しみを乗り越えながら頑張ってきたことを、また1から始めないといけないのかと絶望の淵に立たされました。

そんな香苗さんを支えてくれたのが、ご家族の存在です。
「子どもたちには本当に悲しい思いをさせました」と香苗さんは当時のことを振り返ります。

1回目の癌がわかったとき高校生だった息子さんは、病気と闘う母親の姿を近くで見て、人の健康に従事する仕事に就きたいと考えるようになりました。
現在は運動だけでなく食事や健康に関する全面的な支援を行うパーソナルトレーニングと治療もできる健康増進施設を香住で運営されています。

2回目の治療を終えてからはご両親の介護などもしながら、息子さんの力も借りつつ、徹底した食事の管理や運動を行い、香苗さん自身の健康管理も追求するようになりました。

そして、60歳の節目の年に家族4人でお祝いにお伊勢参りに行かれた際に心に思ったことがありました。

これまで辛い思いもたくさんしてきたけれども、自分が経験してきたことでこれからの人生で誰かの役に立てることが何かできないだろうかと強く感じたそうです。

低糖質のお菓子のお店を始めようと思ったきっかけは、息子さんが運営するジムの利用者さんに手作りお菓子を提供した経験からでした。
徹底して糖質を使わない香苗さんのお菓子は、息子さんのジムでも大人気。
健康や美容を意識しているジムの利用者さんたちにとても喜ばれていたことを思い出し、自分のような病気で苦しんでいる方にも喜んでもらえるのではないかと考えたそうです。
健康志向の方、ダイエット中の方、美容を気にされる方からも求められるような健康的なお菓子を作ることで自分でも世の中のお役に立てることがあるかもしれない、そんな想いから香苗さんは低糖質お菓子のお店を開く決意をしました。

お店をオープンした当初はクッキーや焼き菓子など種類も少なかったので、前日に準備をすれば十分間に合いました。
しかし、病気で食べられない人のために食材を工夫してみたり、地元の食材を使ってみたりと様々な要望に応えるうちに品数はどんどん増え、香住の麹味噌や美方大納言小豆を使ったケーキやパンなど今ではショールームが一杯になるほどです。
普通のお菓子より作製に時間がかかるので、一つ一つ丁寧にいつも時間をかけてお店のお菓子をつくっているそうです。

lovingのお菓子は材料に砂糖と小麦粉を一切使っていません。
砂糖の代わりに植物由来の甘味料ラカント、小麦粉の代わりはアーモンドパウダー、おからパウダー、大豆粉を使用しています。
健康志向のお菓子と言えばパサパサして甘くなくあまり美味しくないイメージがありますが、lovingのお菓子は低糖質なのにしっとりと甘いのが特徴です。
健康のためだけでなく、ダイエットや美容に気を使われている方にも安心して召し上がっていただけます。

lovingのロゴマークはハートに横棒、そしてハートが閉じていないデザインは「愛を土台に、愛が溢れて広がりますように」そんな願いが込められています。
お菓子を食べた人の健康や幸せを心から祈って、この香住の地から愛がいっぱいに広がるように。
香苗さんは、辛い病気を経験したからこそ自分と同じ辛い思いをする人が少なくなるために普段から食事に気をつけ誰もが健康で元気であることを願っています。

香苗さんは店舗での販売の他に積極的なイベント出店も行なっています。1人だからできることも限られるけどlovingのお菓子が本当に必要な人に届くように配送サービスも展開したいそうで、Instagramでメッセージをもらえれば配送も対応可能とのことです。

明るく笑いながらパワフルに精力的に活動するその姿からは、死も覚悟するような大きな病気を乗り越え、人生をかけてお菓子を届ける香苗さんの愛が溢れ出ています。

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