小代区茅野(かやの)。ハチ北の山が近くに感じるこの土地で、薪・ペレットストーブの販売、施工、サウナプロデュース、森林伐採などもしている会社『株式会社ヨキ』を経営する椎葉洋元さんと、ここでゲストハウス『カヤノヒュッテ』を担当する筒井裕子さんのお話を伺ってきました。
「Twitter でたまたま見たのがはじまりです。この物件の家主さんの息子さんの、『誰かいい人に買ってもらいたいなぁ』というつぶやきを見て、ちょっと面白そうだなと思ってすぐに二人で見に行きました。それまで小代のことは全く知らなかったです。
見に行ってすぐに、ここでなら商売できるなぁって思いました。そんなにリフォームしなくてもいいし、すぐ事業できそうやねって話しました。僕も事業所を法人にしたいなって思ってたから、場所を探していたし、部屋もたくさんあるし、家も大きいから、こっちはゆうさんがやってこっちは僕やるわっていう感じで、大雑把に決まりました。」
そこからお二人の熱意が家主さんに届き、古民家を購入され、事業がスタートしました。現在ビジネスパートナーとして一緒に活動されている椎葉さんと筒井さん。お二人ともいわゆる移住組。椎葉さんは現在豊岡市竹野でご家族と暮らし、筒井さんは豊岡市気比でゲストハウスを営んでおられます。
Q.そもそもお二人が但馬に来たきっかけと但馬に来てからここまでの経緯は?
(椎葉)「僕は8年前。子供が生まれて子育てがきっかけで、今の上の子が0歳の時に来ました。3.11 の原発事故が大きな転機になりました。原子力発電の溶接の仕事をしていたので、事故が起きたことがきっかけで、思い切って田舎で子育てするのも楽しいんちゃうかなーっと思って、移住しました。仕事に関しては来た時にざっくりと、でもある程度計画的に考えてました。今までは、建築系のゼネコンの仕事がメインだったから、1 番実績を活用できるのが、建築系やなと思い、建築系の仕事を探し、最初は豊岡市の建築住宅課の職員をしました。
仕事をしながら、古民家を買って自分達でリフォームしていこうと思ったんです。技術と道具を少しづつ揃えていって3年ほど時間をかけて完成させていきました。そこから工務店、薪ストーブ販売店などの仕事を経て、茅野の古民家購入とともに株式会社ヨキを立ち上げました。」
(筒井)「私は元々大阪と岐阜でゲストハウスを運営していて、岐阜でゲストハウスをしていた時に、城崎の旅館の女将せーへん?って、言われてこっちに来たのが移住の1 番最初。そして移住してすぐに小学生の息子と暮らす気比の家を購入。そこに薪ストーブをつける時に初めて椎葉さんと出会いました。大阪にも家はあるから、こっちは別荘使いにしてもいいしとか、いつかゲストハウスにもできるかなって思って。その後コロナ禍になり、旅館の女将を辞めたタイミングで大阪に帰ってもよかったんだけど、息子がその頃には田舎暮らしを気に入っていて、なら残ろうかなと思って。
そこから家を1 年くらいかけてDIYし、ゲストハウスをオープンさせました。その頃から椎葉さんとは物件友達で。私、物件見るのがすごく好きで、いろんな物件や岡山の方の田舎の山や、森林の調査や色んなところに行ってました。山も含めて、方向性とかやりたいことが似ていて、小学校の友達みたいにめっちゃ話すようになって、仲良しになって、お互い強い分野は違うけど、それぞれの得意分野がうまくマッチして、それが交りあった時に何か事業ができるなっていったんです。茅野の家はそのタイミングで見に行き、事業所拠点にできるなぁっとなり、私はここで一棟貸しのゲストハウスできる!と思って、それでもうゴーでした。物件を見てから事業はスタートしたけど、段々と地盤は固まっていってたんだろうね。」
ここまでの色んな時間があって、たまたまいいタイミングで物件と出会い、それがたまたま小代で、お二人の思いややりたいことが小代で結集できた。という感じなのですね。
Q.株式会社ヨキの中にはどんな部門があるんですか?
(椎葉)「ヨキの中にサウナがあり、ゲストハウスのカヤノヒュッテがあり、森林伐採もある。主軸は薪ストーブの販売。」
Q.森林伐採はどんなことをされているんですか?
(椎葉)「家主はいるけど、手付かずになっている山林が多くなっている。上手い活用方法がなく、どうしたらいいのかわからない山がなんぼでもある。でも都心だと山林が欲しいって言う人もあるので、そう言う人を繋いだり、道もなくなってたりするので、道をつけたり。山をリフォームして、使い道を広げたい。僕らは薪を作るって言う大前提があるから、道が近かったら入っていける。」
(筒井)「森林を伐採というと、知識がないと悪いイメージで聞こえるかもしれないけど、すごい大事なこと。手が入ってない山は、暗くなって、食べ物も無くなり、熊とか獣とかもどんどん里に出てきちゃうし、あと根がちゃんと張れず木が細くなっちゃって、間伐されてないと、細い高い木が増えて下の方が生えなくなっちゃう。本当は間伐するっていうことはすごく大事なことなんだっていうのは、椎葉さんから聞いて、なるほどと思った。」
(椎葉)「小代や村岡は木の種類も面白いから、森林セラピーみたいなのもしてみた い。」
Q.サウナ部門についても教えてください。
(椎葉)「ここは薪ストーブのショールーム兼宿っていう設定で、薪ストーブを実際体感して泊まれる場所。そして蔵を改装して作ったサウナは、薪ストーブの熱で温める本格的なサウナになっています。サウナ部門のプロデューサーをしているのは、東京の会社に所属して化学系の研究をしている翔太くん。全然違うタイプやけど、持ち味が生かせるチームワークでやっています。彼はサウナが大好きなんですよね。そもそも自分が楽しむ究極のサウナを作るっていうのがコンセプトやったんです。そこら中のサウナに行ってたんだけど、もういかなくなった。ここに究極のサウナができて大満足で。蔵の2階ではホットヨガ体験もでき、薪ストーブを多くの人に体感してもらいたいなぁって思ってます。」
Q.小代の魅力や、良さを感じることはありますか?
(椎葉)「人やね。人がいい。めっちゃくっちゃ優しい。そして野菜貰える!やっぱり気にかけてくれてるんやんなぁって思う。そして、新聞とかでここが紹介されたら、『嬉しい』って言ってくれる。水も豊富で、ここの地区水とかも水質検査したらAAAで本当に美味しいんです。」最後に今後の展望を尋ねましたが、お二人はここで満足してとどまるわけではなく、『次々に進んでいきたい』と。自分達の『0から1 を作り上げるエネルギーを楽しみたい』と。 「任せられるところは人に任せて、次に繋げていき、また物件探しして面白いことをしていきたい。そして、ただのゲストハウスだけやったら面白くないから、強みを持たせるために何かプラスアルファがあった方がいいと思ってる。サウナありますよ、ストーブありますよ、雪で遊べますよ、みたいな、なんでもいいけど何かプラスした方が面白いし、可能性もある。そんな風に、面白いことを求めて動いていくと思います。」
(著者:町民ライター 中村美和子)