地元工務店の社長でありながら、カヌーを作ったり、きのこ狩りや、罠で仕留めたイノシシや鹿のお肉を美味しそうに食べていたりと、とにかく『面白い人』がいる!という情報を元に西尾さんを訪ねました。
噂通りの『面白い人』!
楽しむことが一番の原動力。行動力と探求心、検証の姿勢が基本にあり、たくさんの引き出しを持ち、
仕事も趣味も何でもない時間さえも、「全て楽しい!」という西尾さんに、自然と仲良くなる『遊び』についていろいろ教えてもらいました。
『おもろく マジに 美しく』
兎塚(うづか:村岡区兎塚地区)で生まれ育った西尾さんは、山育ちのためか海に対する憧れが強く、子供の時は年に一度ほど親に連れられて行く海で、海の物をなんでもかんでも拾って帰っていたそう。
「川魚も好きで、橋の上から一日中でも魚の様子を見ていられるほど。釣りは小さい頃から好きでした。親の教育方針から何かほしいと望んでも買ってもらえたわけではなかったので、その頃からなんでも自分で作るしかない!と自分でいろいろ試行錯誤して作っていました。欲しいものは自分で作る!そんな子どもでした。」
建築の勉強のため地元を離れ、大阪で就職。そこで学んだのは、仕事の中にも『遊び心』が大事ということ。 西尾工務店のホームページに掲げられてるモットーは『おもろく マジに 美しく』。
『バカなことを真剣に考える。でもクオリティーは高く。』これは仕事だけじゃなく、人生全てにおいてそうで、『おもろく マジに 美しく』が全うできれば、人生最高だと思う。」と西尾さん。
変わった依頼のお仕事にも、難しい依頼にも真剣に向き合って、アイデアやひらめきで様々なものを作っておられます。きっと西尾さんにとって不可能なんてないのかも。どうにかして可能になるように考えてくれそうな柔軟性があります。
「遊びも仕事も全て同じ感覚になってきて、ボーダーラインがなくなってきている(笑)。だから、全てが楽しい。全ての時間を楽しんでます。」
西尾さんの本業 西尾工務店のお仕事風景
「ここって何でもあるなぁ!」自然の贅沢さは住んでみてじわじわと実感。
毎日山に入り、自然が身近にある西尾さんですが、自然の贅沢さに気が付いたのは再び村岡に戻ってきてからだそうです。
「少しずつ、じわじわと。山がすごくきれいだったり、夏の夜の涼しさだったり、住んでいてじわじわと良さを感じてきました。自然がこんなにも贅沢だったんだと気が付いたんです。
今、都会に出ている息子が帰省したときに『ここって何でもあるなぁ!』と言ったことが全てだと思います。自然の中には宝物がいっぱいあるんです。」
ハンター(狩猟)をして、山の中の生態系を深く知り、より山が好きになった。
罠の狩猟免許を取ったのは、そんな自然の面白さをもっと楽しみたいという思いから。
「釣りは小さい頃から好きだったし、山のもの、天然の食べ物に興味があったので、イノシシやシカのお肉を食べたいなぁっていうところからはじまりました。
「美味しい肉を食べたい!」なら「自分で仕留めよう!」と、罠の狩猟免許を6年前に取りました。
罠は山に10箇所ほど仕掛けているので、毎朝6時から山に入って、山の中をうろうろと巡回しています。
毎日山に入っていると、だんだんと動物の習性や土の削れ方などわずかな変化で、獣の通り道がみえてきて、今はあの手この手のだまし合いを楽しんでいます。」
初心者にはかなりハードルが高そうな狩猟ですが、なんと止め刺しなど、狩猟の細かい手ほどきは意外にもyoutubeなどのインターネットで勉強したそうです。
近年、香美町では急激にシカが増え、農作物の被害なども増えています。野生鳥獣と人が共存していくためにも、狩猟は重要な役割を担っています。実際、この6年間で若い人の狩猟人口も増えてきているそうで、狩猟を始める若い女性も増えてきているとか。 移住してきた人が免許を取るのも珍しくなく、獣害駆除での狩猟は収入源にもなるので、これを生業にするのもありかもしれません。
香美町の自然はプライスレスもいいところだ!
「山に入っていて思うのは、自然の生態系の豊富さ。雪も多い地区で、標高も高い、朝晩の寒暖差もあり、そういう自然的な要因も揃ってか、村岡や兎塚の食べ物はすごくおいしいです。
それに美方郡のシカは美味しいと思います。山の中にいっぱいある笹を食べて、山のものをたくさん食べているから。
アナグマやイノシシ、シカ、ハクビシン、タヌキ、ウサギ。山の中には市場に出回らない面白いものがいっぱいある。
山菜もそうだし、きのこなども。いろいろ獲って食べました。鹿カツ丼を作ったり。
自然の中にある面白さ、自然の生業。天候によって味が違ったり、真っ赤でいかにも毒キノコっぽいものが食べられたり、きのこは冷凍した方が風味がまして美味しくなるとか。
もう、車で3分で非日常の世界が広がっている。すごく贅沢なことで、都会の人から『羨ましい!』といつも言われています。香美町の自然はプライスレスもいいところだと思う!」
西尾さん×山での話は尽きることがありません。
「みんな狩猟の話にはすごく食いつくんです。クマの話やハクビシンうまい!とか(笑)建築の話させろーって思います。」
シカやイノシシ、山のものにも実はそれぞれ旬があって、秋の繁殖期直前のイノシシは脂がのっていて本当に美味しいのだとか。
でも山の恵みをいただいている立場。キノコなど乱獲すると山が怒っているような気がするので必要な分だけいただくようにしているそうです。
山を愛しているからこその、自然との共存の仕方、楽しみ方を学ばせていただきました。
初めてのカヌー作り。
何でもやってみたら、できないことはない!新たな挑戦が仕事にもいかされている。
西尾さんの挑戦のひとつにカヌー作りがあります。
どんな経緯でカヌー作りが始まったのでしょうか?
「2007年、旧兎塚中学校の総合学習として、学校林の間伐材を利用して何か作れないだろうかという話があり、作ったことないけど、カヌーを作ってみよう!と思い、そこから図面を取り寄せて、とりあえず試作してみることに。
最初はわからなくて失敗もたくさんしましたが、なんでもやってみないとわからない。
とりあえずやってみる!そしたらできないことはないなぁと思えました。このチャレンジは仕事にも生かされることがあったりして、自分にとってもすごく大きな経験になりました。」
雪の残る山で間伐材の伐採から中学生も関わり、西尾さん指導のもと、4m80cmのカナディアンカヌーを3つ作ることに成功。
生徒だけじゃなく、先生、保護者(PTA)、地元の人(区長さんや製材屋さんなど)みんなで協力してものづくりの楽しさをみんなで分かち合いながら作った最初のカヌー。
「やっぱり、できたら進水式もしたいなぁと、矢田川まで運んで中学生と進水式もしました。みんなすごく喜んでくれて、本当に嬉しかった。」
学校林の間伐材で、自分たちでがんばって作ったカヌーに乗るという体験。中学生にはとても貴重で素晴らしい経験になったことでしょう。
その完成したカナディアンカヌーは今でも村岡区町民センターと、木の殿堂に展示してあるとのことです。
その後もカヌープロジェクトは続き、建築士会の事業でチーム戦で5.1mものカヤックを作ったり、香住高校の生徒さんと授業の一環でカヌーを作ったり、その後も海のゴミ拾いのボランティア活動や進水式を企画したり、いろいろな仕掛けも盛り込みながら、地域とのつながりをカタチにされてこられています。
「カヌーを作ってる時はみんな夢語るんですよねー。男女で「カヌー作り」したら婚活にもなる。回数を重ねて共同作業することで、頼りになるところが見えたりして。カヌーを作ることで、面白い人もどんどん集まってきて、交流の場にもなった。何度も訪れて制作するので、交流人口を増やすのにもすごく向いていると思いました。」
プライベートでもカヤックを作る西尾さん。どんどん進化して、生け簀のあるカヤックを作って自分のつくったカヌーで釣りを楽しんだり。 と、もう夢の世界です!かっこよくて羨ましすぎます。
「3つの町が合併した香美町、流れている川が矢田川で繋がっていく、その川をカヌーで下るのも面白そう。」 今年もカヤックをトラックに積んで、海まで出かけて楽しまれたとか。いつか矢田川カヌー下りも実現して欲しいです。
本当の贅沢は無限大な遊び場がすぐそばにあること。
プライスレスな自然。遊び方は無限大で、本当の贅沢とはこういうことなんだと改めて感じました。
最後に田舎遊び、田舎を楽しむコツを聞いたところ『貪欲に探すこと』と教えてもらいました。
探せば面白いことがいろいろ見つかる、そんな宝の山をいろいろつついてみる行動力と、好奇心。
楽しいことは自分から探しにいかないと。でもきっと見つかる。そんな香美町での暮らし方をたっぷり教えてもらいました。
本当に楽しんでいる人のキラキラした目で語る『面白い人』。まだまだ伝説を作ってくれそうです。ありがとうございました!
<著者:香美町町民ライター 中村 美和子>
香美町役場企画課調べ / 狩猟免許などご興味がある方はこちらへ
山と森を愛するレンジャーたちへ兵庫県猟友会