「自分にしかできないこと」ダンスを通して感動を届けたい

D.S.T 渡辺絢音さん
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「好きなことを仕事にしたい」誰もが一度は考えたことがあるこの願いを、ふるさと香美町で自然体のまま叶えた女性に出会いました。D.S.T(ダンス・スペシャル・チーム)を結成した渡辺絢音さんです。絢音さんは今、香美町小代観光協会で事務の仕事をしながら、香美町村岡区・養父市・豊岡市・香住区など兵庫県北部を拠点にダンス講師を務めています。まだまだ香美町内では珍しい「ダンスの先生」。村岡生まれ、村岡育ちの彼女がどのようにして好きな仕事に至り、また続けているのか、お話を伺いました。

2020年1月19日㈰ 『やぶキッズダンス交流会』

 

憧れから独学で始めたダンス

幼少の頃から体を動かすことが大好きで、音楽が流れると勝手に体が動く子どもだったという絢音さん。ダンスに目覚めたきっかけは、偶然つけていたテレビで放送されていたダンス番組。しかし、ダンサーへの憧れを持ったものの、当時の村岡近辺に、ダンスを習える場所はありませんでした。ダンスという習い事や進路に理解のある時代でもなく、ダンスの専門学校に行きたいという希望も支持されずに断念。テレビ番組などを参考にしながら、絢音さんは独学でダンスを習得し始めます。

村岡高校を卒業後、保育士の資格を取るために兵庫県尼崎市に進学。ダンスのことは一旦脇に置き、資格に向けて歩み始めた絢音さんでしたが、同じ学校でチアダンスの経験がある友人に出会い、文化祭でのダンス発表チームに誘われます。

「一番厳しかった体育の先生が、私たちの発表を見て『ガラッと人が変わったようだった。最初から最後まで、まるで違う人みたいに見えたし、まるで空を舞う天女のように見えた』と褒めてくださって。いつも褒めるような先生じゃないので、驚くと同時にとても嬉しくて、ダンスの道のほうがやっぱり自分に合っているのかなと感じました」

その傍ら、都会での暮らしには息苦しさを感じていたという言葉も。せかせかしている時間の流れ、電車の時間に振り回されるような日々に、「地元に流れる時間が好き」なんだと自覚したと言います。

渡辺絢音さん

 

 

突然のお誘い…イチからクチコミで広げたダンス教室

卒業後は豊岡に移住、保育士として働いていた絢音さん。小さい子どもたちはもちろん好きでしたが、「なにか自分が本当にしたいことと違う」という思いが拭えず退職し、その後様々な仕事を経験しながら自分のしたいことを模索していました。

その中で、まちのための様々な企画を立案している人と出会い、唐突に「ダンス教室を開いてみないか」と言われます。ダンスは独学で、師事していた先生もいない、資格もない。それでもやってみたいことだったから頑張ろうと一念発起。豊岡市の兵庫県立但馬文教府の一室を借りてダンス教室を始めることになりました。

2019年6月2日㈰ 『ようかJAM』

SNSやクチコミでゆっくりと広がりながらチームメンバーが増えてきました。

現在は村岡の「スターリットスカイ」、豊岡市但馬文教府の「トラックス」、養父市おおやアート村ビックラボの「ディーエスティー」、香住の「トゥインクルオーシャン」など各地にチームを結成。

特におおやアート村ビックラボのチームは練習時間も3時間と長く、ダンスをとことん楽しみたい発展コースとしてレベルの高いチームになっています。村岡のチームにもクラス分けがあり、自分のレベルに合ったダンスを楽しめます。絢音さんは教室を運営しながらダンスのライセンスも取得し、指導の技術にますます磨きをかけてきました。

2021年12月5日には養父市民交流広場のホールにて生徒さんの第1回目の発表会を開催。講師は絢音さん一人という状況で舞台を作るのはとても大変でしたが、頑張っている子どもたちの姿を見た保護者からも感謝の声が絢音さんに届けられるなど、子どもたちにとっても絢音さんにとっても達成感のある一日になりました。

 

ダンスを通して子どもたちの心を解き放つ

2021年12月5日㈰ 『Dance Special Team発表会』 

「習いに来る子は保育園児から高校生まで。特に保育園児には年齢的に教えるのが難しいときもありますが、保育士として勉強してきたことが役に立っています。対面で子どもと左右逆に指導することや子どもたちとのコミュニケーションの取り方・指導の仕方など勉強してきたことをフルに使って子ども達が楽しく踊ることができているので勉強したかいがあったと思います。」

子どもたちにとってダンスの先生は、親とも学校の先生とも違う一人の大人。ふるさとで開いたダンス教室で、絢音さんはアットホームに子どもたちと関わることを心がけています。

できない、わからないと泣いている子どもには、できることから教えて、できたときには「できたやん!」とハイタッチをして勇気づけたり、「〇〇ちゃんならできると先生信じてるよ」と励ましたり。小さい生徒さんがぐずっていたら抱っこして落ち着かせることもあります。

2019年10月13日㈰ 『ハチ北ミュージックフェス』 

ダンスの楽しさを伝えたい。その傍らで、きちんとしなければいけないところも教えたい。ただ子どもと向き合うだけでなく、そこにダンスという要素が加わることで、絢音さんは子どもたちが成長していく姿を間近で感じられ、嬉しさと手応えを感じるようになりました。

「習い始めの頃の子どもたちは自分の気持ちや意見が言えなかったりしていたけど、続けるうちにやる気がどんどん出てきて『次はこれやりたい!』と主張したり、表現したりできるようになってくる。子どもたち一人ひとりとコミュニケーションを取って、できることを一つ一つやっていくことで、みんなで成長していきたいと思っています」

ときには自由な表現を促し、感情を込めたダンスを踊って欲しいと伝えることも。ダンスを通して言いたいことを言い合える関係づくりにも注力しています。

 

観光協会の仕事とダンス教室、2つの仕事をこなせる力の源は

小代観光協会内部。EVサイクルのレンタルも行っている

 

 

昼間は香美町小代観光協会で事務員を務める絢音さん。知り合いの紹介で勤めることになりましたが、この仕事に就いて改めて地元を新しい目線で見るようになったといいます。

「地元のことは意外と知らなかったんだなと。これまであまり足を運ぶことのなかった観光名所に実際自分で行ってみてると地図ではたどり着くのが難しいなと気づいたんです」

小代には秘境のような名所や見ごたえ抜群の滝などもありますが、オンラインマップでもたどり着くことができないような場所にあり、観光に来た人が迷ってしまうことも多々。

「今まであまり行ってこなかったからこそ、観光者目線に立って自分で行って写真を撮って、初めて来た人でもわかりやすい地図を作りたいと思っています。そして、もっと地元の良さを知ってもらうためにいつか観光地とダンスを融合させたプロモーションビデオ制作を実現させたいです。」

観光案内にSNSの発信、運営費用の管理など昼間も多くのタスクをこなす絢音さん。

二足のわらじを履くのは大変ではないのでしょうか。

「それが、どんなに疲れていても、どんなに悪天候でも、レッスンに行きたいと思うんです。自分にしかできないことだと思っているんで、子どもたちのやりたいという気持ちを汲み取って続けていきたいと思います」

一人で学び、一人で立ち上げ、一人で作り上げてきたダンス教室。子どものころ持っていた「こんなふうに習いたかった」を絢音さんは形にしてきました。忙しい暮らしの中でも、ダンスへの気持ちが、彼女を前向きにしてくれます。

 

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  •  
    スターリットスカイ 毎週火曜日18時~22時 村岡中央公民館
  •  
    トラックス 毎週水曜日19時~21時 豊岡市但馬文教府
  •  
    トゥインクルオーシャン 月2~3回木曜日19時~21時 香住区中央公民館
  •  
    ディーエスティー 毎週金曜日19時~22時 おおやアート村 BIG LABO
  •  
  • ダンスについてのお問い合わせは、おおやアート村BIG LABOまで。
  • 所在地

    〒667-0315

    兵庫県養父市大屋町加保7番地

  • 開館時間
    9:00~17:00
  • 休館日
    水曜日 (ただし祝日の場合はその翌日)年末年始 12月28日~1月3日
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