2023秋 ハチ北の秋は、文化の秋?

2024.03.06

       

忘れてた

今年もまた思い知る。
ハチ北、寒い!

ハチ北にきて困ったのが、夏と冬の暮らし方が全然違うことだ。

夏は涼しく快適なのだが、冬は寒くてしかたがない。

燃料費もかかるので、夫ムッティーとふたり、それぞれの部屋で作業していたのを一部屋に集約し、その部屋だけを温める。

冬の間は仕事から食事からほとんどすべての生活をその部屋だけで賄っている、ほぼワンルーム生活になる。

半年に一回、パソコン周りの仕事道具一式を一挙に引っ越しするのはちょっとめんどうなのだが、快適に過ごすためにはやむを得ない。

今後のハチ北暮らしの課題として、雪国の暮らし、寒い国の暮らしを学習してゆきたい。

日本だと北海道が寒いのでは? と思い北海道の暮らしをインストールしようとしたのだが、北海道の家はもともと気密性がすごいらしい。

これは、地方というか、寒い地域+古民家暮らしの知恵をインストールしなければならないのか。

 

古民家暮らし・古民家改修系YouTuberが増えるのと同時に古民家暮らしやめました系有名YouTuberも増えている昨今、たしかにいくつかの条件が揃わない限り、コストパフォーマンスは決してよくないし心身共に健康によくないのでは、と思うこともある。

幸い私が住んでいる家は、古民家というほど古くはないこと、移住する1年前まで人が住んでいて水回りの改修や屋根の補修などが問題なくそのまま住むことができたこと、夫ムッティーがDIYが好きなこと、家を譲っていただいた方は今なお近所に住んでいて仲良くさせてもらっていること、なにより格安で譲っていただいたことなどの条件が重なり、なんだかんだとお金がかかっているとは言え、新築を買うよりはもちろん、京都で賃貸を借りて暮らしていたときよりも支出少なく、そして快適に暮らすことができている。

一年暮らすとなんだかんだで「わがや」としての愛着も芽生えてきており、長期滞在先から帰ってくると、「やっぱり家っていいな~」と思うのだった。

この家で、冬どう快適に暮らすか。ハチ北で暮らしていくには欠かせない知恵。

私などどこか賃貸暮らしの延長線上の気持ちで暮らしているが、なんせ「わがや」、いわゆる「マイホーム」なのだ。何をするのも自由、なはず。

今年は夫ムッティーが二重窓を取り付けてくれたおかげで、去年よりもさらに快適な環境で過ごすことができている。

はじまってしまえば慌ただしくてそんな悠長なことを言っている暇はないのだが、つまり暮らせないほど不便も苦痛も感じていないのだが、時間をかけて、より快適性の高みをめざして、ゆっくりでも、そういうことを考えてゆきたい。

秋祭り

秋のハチ北は、文化の秋。

毎年恒例「秋祭り」が今年も行われた。

一度家に入ると二度と外に出たくない出不精の私だが、秋祭り前夜、暗い帰り道に煌々と光っている太田神社を見かけ、何か神聖なものを見た気がして思わずカメラを取りに走った。

明日の祭りに向けてひっそりと息を潜めているような、それでいてそこはかとない期待感を感じるような。

こういう行事が守り続けられているということが新興住宅街育ちの私にはなんだかふしぎで、でもとても尊いことだというのは、わかる。

栃餅作り

そして、今年度は新たな取り組みとして「栃餅(とちもち)」を作ることに。

ハチ北のキャンプ場「グリーンパークハチ北」には栃の木がたくさんあり、キャンプ場には栃の実がたくさん転がっている。

これをなんとか活用できないかと、ハチ北の女将たちのグループ「やまぶきの会」、そして今となっては誰もはっきりとは知らない「栃餅」の作り方を知っているおばあちゃまお二人、せっちゃんさんと、さかえさんの全面協力のもと「栃餅」作りが始まった。

 

まずはキャンプ場に遊びにきてくださったお客さんに、「栃の実拾ってジュースをゲット!」というキャンペーンを行った。

栃の実10個拾って持ってきてくれたらジュースを一本プレゼントという企画だ。

よろこんで参加してくださる方が多く、おかげさまで二週間弱の期間に約30kgもの栃の実が集まった。

 

さて、ここからが大変なのだった。

このバケツ何杯分もの栃の実を下処理してゆかなければならない。

私たちは、栃餅が高級品である所以を身をもって知ることになるのだった……。

 

まずは水に浸してアク抜きを行う。

しばらくの間、観光協会の玄関には水に浸された栃の実がずらりと並べられていた。

次に、皮剥きだ。もちろんすべて手作業である。

これがなんとも過酷な作業で、熱湯でゆがいた栃の実を一粒ずつ専用の器具で押し割り、その亀裂から手で、あるいはナイフで皮を剥いてゆく。これがまた硬いのだ。

熱湯は熱いわ皮は硬いわアクで手がキシキシになるわでかなり過酷な作業だったようだ。

私は仕事の都合で終わりがけのほんの少ししか参加できなかったのだが、地元の住民の皆さん、老人会の方々にもご協力いただき、なんと8時間をかけて30kgもの栃の実の皮剥きを行った。

そして後日、いよいよ餅作り。

餅米を茹で餅突きマシーンに投入、そこに茹でた栃の実を合わせてこねあげてゆく。

栃の実も餅米も、すべてハチ北で採れたもの。

アツアツのうちに小さくちぎってやさしく丸めてゆけば、もうよく見知った形の栃餅がそこにある。

えぐみも全くない、じんわりおいしい栃餅が完成した。

これだけの手間と時間がかかっているんだ。栃餅が高級品であるはずだ。

このお餅を使ってぜんざいを作り、2023グリーンシーズンのキャンプ場最終営業日にご来場いただいたお客様に、ふるまいぜんざいとして提供させていただいた。

おぜんざいのあずきも餅米も、もちろんハチ北産。すべてがハチ北の自然の中で育ったものでできたおぜんざいが完成した。

ハチ北では昔、スキーに来たお客様をぜんざいでおもてなししていたと聞いたことがある。

その頃も、こんなふうにして、遊びに来てくれる人のことを思いながらぜんざいを作っていたんだろうなと思った。

できあがったお餅はじゅうぶんな量があり、ふるまい用のお餅のほか、ハチ北全戸に配布を行い、また住民がいつもお世話になっている地区内の太田神社、大山衹神社、稲荷神社へも奉納させていただいた。

ここで暮らしていると、当たり前のように「神社へ奉納」という発想があることに驚く。

神社だけでなく、鉢伏山に対する感覚もそうだ。

「崇拝」のような大仰なものではなく、「見守ってくれていることへの感謝」のような、そんな生活と共にある素朴な信仰。

ハチ北での暮らしの中に根付いている、自然と文化。

私にとってはとてもふしぎなもので、でも同時に少し憧れもする。

大いなるものに守られている、という根拠のない安心感や信頼のようなものは、子供の頃親に対して感じていたようなものに近いのかもしれない。

自然を含む、大いなるものに対する感謝と畏怖。

そういった感覚を得られるというのは、田舎暮らしならではの恩恵なのかもしれないと感じる。

そして冬へ向かう

そしてシーズンインに向けて、にわかに活気づくハチ北。

12月23日のシーズンインを前に、12月17日にはどっさりと雪も降り積もり期待感はばっちりだ。

車の出入りも多くなり、村全体がそわそわと浮き足立ち、じわじわとテンションが上がってゆく。

さあ、今年の冬も、めいっぱい働くぞ。

気合いはじゅうぶんです。

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