香住・柴山から但馬の魅力を伝えたい

お宿 まる屋/レストラン桜桃 藤原啓太さん
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香住区柴山港を目の前に臨む「お宿 まる屋」。海に面した立地にありながら、ロビーへと続くアプローチは、木々の緑に囲まれた非日常的な空間。地元の設計士が手掛けたお宿は、メゾネットタイプや和洋室のお部屋など、お客様がゆったりくつろげる工夫に満ちたスペースとなっています。併設のレストラン「桜桃(ゆすらうめ)」では、地元の旬な食材を使用したメニューを提供しています。「お宿 まる屋」の3代目として、料理を中心としてお客さまをもてなす藤原啓太さんから、これまでのご自身の歩みや香住をはじめとした地元の魅力についてお伺いいたしました。


(建物へ続くアプローチ)

 

「お宿 まる屋」を支えるための大阪修行にて

藤原さんは宿泊業を営むご両親の背中を見ながら育ちました。高校卒業後、家業の手伝いをするうちに後継への想いが高まってきたといいます。


(「お宿 まる屋」 ロビー)

旅館を継ぐなら料理の勉強をしたい。その想いから、修業をするため22歳で香美町を離れました。当時すし屋に勤務していた同級生を頼り大阪へ。居酒屋で約1年、日本料理店で約9年の修業を積みました。

「修行させていただいた日本料理店は、大阪で何店か食べて回った中でも最も印象に残ったお店で、直接働かせてくださいとお願いしました。席数がそこまで多くないお店だったので、下ごしらえから盛り付けまでトータルに関わらせていただいて、とても勉強になりました。」

大阪の生活では、地元への印象が変わる出来事もありました。


(藤原啓太さん)

 

「大阪はお店がたくさんあって、夜でも明るくて、便利で……、正直はじめは田舎出身であることに劣等感を感じていました。ですが、お客様に『どこから来てるの?』と聞かれて故郷の香住のことをお話すると、どのお客様も『いいところだね、空気が美味しいね、食材が美味しいね』といいことばかり仰って。外から眺めることで、故郷の良さが改めてわかりました。」

学んだことを基に地元でのつながりや経験も積めるよう、10年で修行の区切りをつけて2016年に帰郷。一度外に出ることで、藤原さんは新しい目線で地元を見られるようになっていました。

 

お宿とレストラン、Instagramで但馬の魅力を発信したい


(お昼のミニ会席 小鉢の一例)

「大阪の日本料理店でお客様によく聞かれたことは、城崎温泉や湯村温泉、竹田城跡のことや但東町にある行列ができる卵かけご飯のお店など、香住だけでなく但馬全域のことについてでした。聞かれるうちに『自分は地元のことを全然知らない』と痛感し、帰省の際にはお客様にお話できるよう、地元の知らなかった場所に積極的に出かけました。」


(ランチメニュー 手打ちそばセット)

帰郷後、藤原さんが真っ先に始めたのがInstagram。自身の住む場所を知ってもらいたいと毎日1枚ずつ発信し続け、2019年9月の時点で約1,200枚を記録しています。

「はじめは大阪に住む友人たちに知ってもらいたいという気持ちでしたが、徐々に但馬に住んでいる友人たちからも反応をもらえるようになってきました。『近いとこにあるけれど知らなかった。行ってみたい。但馬にこんなところがあるんだ。』という反応をもらえて嬉しかったですし、自分自身、発信を通して但馬の魅力をより知ることができました。」

 


(藤原さんのInstagramより。香美町小代のうへ山の棚田についても発信)

身近にあっても知らなかったことに自ら出会い、「いい場所だね」とフィードバックを受けることで、故郷が「本当に大好きな場所」「多くの人に知ってもらいたい場所」として確かな存在感を持つようになりました。

「香住はもちろん、但馬の魅力を伝えたいという想いがあります。最近積極的に発信しているのが、城崎温泉の伝統工芸品の麦わら細工です。城崎温泉では、昔から親しまれてきた麦わら細工ですが、正直、香住においてはあまり馴染み深いものではありません。しかし、長い歴史の中で作り上げられたこの素晴らしい品を沢山の方に伝えたいと思うようになりました。そこで、ただ撮影して発信するだけでなく、自分のフィールドに持って来られないかと、職人の方にお願いして器を作っていただきました。ゆったりとお食事の時間を楽しんでいただける演出として、ご好評いただいています。」


(麦わら細工の器)

 

お客様に喜んでもらえるおもてなしをこれからも

心を尽くしてお客様をおもてなしすることで、但馬での滞在を心ゆくまで楽しんで欲しいと語る藤原さん。

「小さいお宿なので、その分目の届く範囲でできる、距離の近いおもてなしができたらいいなと思っています。地元の魅力を知っているからこそ言える、思い出に残るお土産屋さんの紹介などを行うこともその一つです。」


(和洋室・客室の一例)

お客様からの言葉に、地元への愛情が更に深まることも。

「柴山といえばカニですが、カニをたくさん食べてこられたお客様に『ここのカニはなぜこんなに美味しいの?』とお声をかけていただけたことがとても嬉しく印象に残っています。地元だからこそ、柴山の漁師さんやカニの水揚げ・選別に関わる地域の方を知っているので、皆様の顔が浮かんで感謝の気持ちが湧いてきます。主に父親が行っている競りにも同行し、そこで初めて出会う食材もあり、競りに行くたびに驚かされています。カニ以外にもお客様に『おおっ』と喜んでいただけるような食材がありますので、ご提供することで知っていただければと思っています。」

一度離れたことで改めて知ることができた、底知れない地元の魅力を、お仕事と発信で多くの方に届けるべく、藤原さんは見識を広げながら腕を磨いています。

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