手に届く場所で満ち足りる、柤岡の暮らしと仕事

JINEN AN 〜山村の石窯ピッツェリア〜 岸本元気さん、葉子さん
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香美町村岡区、標高約500mの山上にある集落、柤岡(けびおか)。かつて民宿だった大きな古民家が、木と手仕事の香りが漂うピッツェリアに生まれ変わりました。ゆったりと流れる時間を味わいに、遠方からも多くの人が訪れる豊かな自然を感じる空間。「JINENAN」を経営するのは岸本元気さん、葉子さんご夫妻です。柤岡の自然とともに暮らし働く、お二人のライフスタイルについてお話を伺いました。

 

(JINENAN 看板)

豊かな四季折々の風景と営みがある柤岡に惹かれて

(岸本元気さん)

柤岡で育った元気さんと、千葉県出身の葉子さんが出会ったのは東京でした。ものづくりが好きなお二人は、その頃から趣味でパンを焼き、ハンドメイドやクラフトを楽しんでいたといいます。東京で働きながら、長い休みが取れるたび、元気さんの故郷である柤岡へ。葉子さんも元気さんのお母様と一緒に山に入り、季節の手仕事を楽しみ、自然や四季折々の風景を満喫しているうちに、自然と柤岡という土地に惹かれるようになりました。

(岸本葉子さん)

お二人が「柤岡に帰ろうか」と考え始めたタイミングでお母様からも「家業の民宿を閉めようと思う」と発信がありました。現在JINENANがある古民家は、岸本家の持ち山から木を切り出し、村の人達と共に建てた、思い入れ深い建物です。香美町の中でも特に雪の多い柤岡で、冬の間村の人達が集まってものづくりをする、集いの場でもありました。

(JINENAN 外観)

「ここは人が集まる場所だから、お店をしてもいいかもしれない」

それまで東京のイタリアンレストランで勤務していた元気さん。自然と食の豊かな柤岡で、山と自然のある暮らしの中、自分たちの思うお店を作りたいと考えるようになりました。

畑に入り、山に入り、ピッツァを焼く。めぐりつながる暮らしのスタート

(JINENAN 内装。木のぬくもり溢れる空間)

 ものづくりがとにかく好きなお二人。和風の民宿をイタリアンレストランにリノベーションするのも、自分たちの手で行いました。自分たちで畳をフローリングに張り替えるなど、見慣れない光景に村の方たちも何度も改装の様子を見に来られました。

「はじめから明確に『こんなお店にしたい』と決めていたわけではないのですが、僕たちが居て心地良い店かということを考え、好きなものを置いているうちに今の形になりました」

(JINENAN 内装。食事を待つ時間も豊かにゆったり流れる)

毎年12月から翌年3月ごろまで、JINENANは冬季休業に入ります。その「冬ごもり」の季節に、毎年少しずつ改装を兼ねて、より居心地の良い空間へと手入れし続けてきました。常連のお客様は、毎春JINENANの新しい表情が見られるのを楽しみにしています。冬期にはお二人の好きなものづくりも行い、レストランの営業日にはご自身の作品やお母様の陶器、近隣の作家さんの作品とともにレストラン内の雑貨コーナーで展示販売します。

4月から11月も、営業日は土、日、月、火の週4日。残りの3日は畑作業をしたり、持ち山の手入れをしたりしています。空気の澄んだ柤岡で育った野菜を新鮮なままに提供することは、柤岡でしか味わえない贅沢です。またオープン当初はピッツァの取扱がなかったJINENANがピッツェリアとしてリニューアルオープンしたのは、山の手入れをしてきたことがきっかけでもありました。

(自家製の薪が美味しいピッツァを焼く燃料に)

現代では持ち山があっても山に入ることが難しく、荒れてしまうケースが課題になっていますが、本来の山は、人と共存しながら暮らしの恵みを入手できる場所でもありました。元気さんと葉子さんは山の手入れで出る薪を、ピッツァを焼く燃料として巡らせることにしました。もちろん、石窯も元気さんの手作りです。

(JINENAN キッチン。左手に元気さんお手製のピッツァ窯が)

ここでしかできないことを、この場所とともに

「香美町は山、川、海がコンパクトにまとまった場所。自分たちの欲しいものはすべてここにありました。」

(パリッと香ばしいピッツァメニューの一例)

国産の小麦粉と、自家製の天然酵母を使って焼き上げるピッツァは生地の香ばしさと食感が大きな魅力です。季節のメニュー「ケビナーラ」はその時そこにある食材をもとにレシピを考案。数週間しか取れない食材もあり、常に「今ここにある」そして「今ここにしかない」季節の恵みを凝縮した一枚になります。具材は野菜の他、香住・浜坂の海の幸や、小代区のNPO法人D.B.Cグループを運営する「峰鹿谷(ほうろくや)」から仕入れるジビエなど、「ここにあるもの」を中心に取り揃えます。

(その時そこにある恵みをふんだんにつかった季節のピッツァ)

「山から切り出した薪を燃料にして、毎日開店して薪を過剰に使い過ぎると、里山の自然環境のバランスが崩れてしまい兼ねません。この村でできることを考えた時、一週間の中でお店に携われる時間は3、4日がめいいっぱいだと感じました。山や畑にいる時間をお金に換算するのは難しいけれど、僕たちの大切な生業の時間です。」

 柤岡だからできることを、柤岡という土地に感謝しながら賄う。目まぐるしい毎日の中でつい置き去りにしそうなことをもっと自然に、丁寧にと心がけて日々の暮らしに精を出すお二人。

「仕事のために暮らしているわけじゃなく、日常の暮らしが豊かになることで充実した仕事ができたらいいね、と話しています」

 緑が芽吹く春には、また新しい自然の恵みが柤岡にやってきます。次の春の訪れを、岸本さんご夫妻もJINENANを愛するお客様も心待ちにしています。

※2019年3月16日(土)営業再開予定です。

  • 店名
    JINEN AN 〜山村の石窯ピッツェリア〜
  • TEL
    080-3206-5033
  • 所在地
    兵庫県美方郡香美町村岡区柤岡632
  • 営業時間
    11:30〜15:00頃(売り切れ次第終了)
  • 定休日
    水、木、金曜日 12月~3月 冬季休業 臨時休業あり
  • web
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