石材加工の技術を磨き、未来に残るものを作りたい

山﨑石材株式会社 山崎良やまさきりょうさん
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香美町の香住地区で、墓石や記念碑などを多数手がけてきた山﨑石材株式会社。石を選ぶところから、据付やリフォームまですべての工程を一貫して行い、地域の方の生活に根ざして長く親しまれています。今回は、ここに3代目としてUターンしてきた、山﨑良さんにお話を伺いました。

 

山﨑良さん

 

身近だった石材加工業に後継を決意

 

良さんは、香住漁港間近にある山﨑石材の長男として生まれ、高校時代までを香住で過ごしました。海に近い環境ではありましたが、子供の頃の遊び場は海ではなく、近くの神社だったと言います。そこに行けば約束していなくても必ず誰かがいて、年齢を越えて遊ぶことができました。人数が集まると野球が始まり、良さんも野球を教えられ、夢中になりました。少年野球チームに入り、中学・高校でも野球を続けるなど、スポーツが大好きな子ども時代でした。

 

野球の傍ら、子どもの頃から家業もよく手伝ってきた良さん。おじいさんに連れられ、石材加工の現場にもよく行きました。石材加工の仕事には石を墓や石碑の形に加工するだけでなく、文字を彫刻する作業もあります。お墓や石碑に文字を彫るには、文字を彫る石材の一面にマスキング用の特殊なゴムシートを貼り、そのゴムシートに文字の形を写し、彫刻するところを切り取ります。それからサンドブラスト機という空気で砂を吹き付けて彫刻する機械を使って文字を彫り、完成したら貼りつけたゴムを剥がす。そのゴム剥がしは良さんが担当することも多く、石材加工の仕事はいつも身近にあったため、イメージしやすい仕事でした。

 

字彫りの作業中

 

弟や妹がおり、また異年齢で遊ぶ機会が多かったこともあり、良さんには保育士になることを夢見ていた時期もあったといいます。それでも、幼い頃から現場を見てきたこと、家業を継ぐ長男であるという自覚などから、石材業を後継することを意識するようになりました。豊岡市の工業系高校に進学し、将来的に必要になりそうな、車両系建設機械の資格などを取得。卒業後は、村岡区の中島石材店・中島雄大さんからの紹介で、中島さんと同じ愛知県岡崎市で修業を積みました。中島雄大さんについては、「WONDER KAMI」で、2019年に取材をしています。

 

中島石材店・中島雄大さんの記事

 

修業で愛知県岡崎市へ。香美町を離れたことで見えてきたもの

 

良さんの作品、石灯籠

 

愛知県岡崎市は日本三大石製品産地として知られています。良さんは石材の現場で修業を積みながら夜間学校に通い、石灯籠やお墓など、石材加工の技術を磨きました。加えて当時行われていた、名古屋城の本丸御殿の再建に関わる加工もさせてもらえるなど、貴重な体験もあったとのこと。小・中・高と野球に打ち込み、体力には自身があった良さんでしたが、石材加工の現場は思った以上に過酷でした。今まで使わなかった上半身全体の筋肉を使うことになり、うまく力が入らないという問題に直面。筋力アップのため、仕事の後に、先輩と一緒にジム通いをするのが当時の習慣であり、気分転換の時間でもありました。

 

お墓だけでなく、様々な作品を手掛ける

 

岡崎市は愛知県の中でも比較的都会であるため、香美町に比べると人と人との繋がりが希薄です。地域の人の目を事あるごとに感じながら過ごしてきた幼少期に比べて、岡崎市での人との距離感は、良さんにとって心地いい部分もありました。それでも香住は住み慣れた場所で、人との繋がりはある程度あった方がいいと思うようにもなり、修業を経て戻ってくる時には、帰るのが楽しみになっていたそうです。

 

石材の魅力は「残ること」。自分の作った作品を伝えたい

 

懐かしの地元に帰ってきた良さんですが、子ども時代一緒に野球チームをやっていた仲間で、今も地元にいるのはわずか2人。少し寂しくもありますが、毎年お盆に開催される「香美町盆野球大会」には大勢の仲間が帰省し駆けつけてくれます。また、香住に帰ってからは香美町商工会の青年部にも入り、町内の異業種との繋がりも多くでき、最近では青年部の繋がりでゴルフも楽しむようになりました。子どもの頃と楽しみ方は変わりましたが、体を動かすことが好きな良さんの生活は今も充実しています。

 

また、商工会青年部に関わるようになって感じたのが、圧倒的な人手不足。特に自身のような20代の人材は不足し、どの会社も求人が課題になっています。そこで、香美町に移住・定住してくれる人が増えるよう、婚活イベントなども企画中です。良さんが考える最大の香美町の魅力は、自然。一つの地域に、海も、山も、川も揃っていて、人も温かい。人との距離感が近いことに関しても、世間で「ワンオペ育児」が問題視される中、地域全体で子育てをする雰囲気が自然と備わっている香美町のような場所は一つの解決への糸口になるかもしれません。

 

良さんの叔父さん・山﨑大作さん

 

現在、山﨑石材は良さんのお父さん、叔父さんとの3人で石材加工を行っています。良さんが、石材加工に感じる一番の魅力は「残るもの」であること。高校時代に毎日何気なく眺めていた、豊岡市の市役所前や竹野駅前にある記念碑は、お父さんが手掛けたものだということを、良さんは最近知ったといいます。そしていつか、自分が家庭を持ち、子どもが生まれたら「これはお父さんが建てたんだよ」と伝えられたらいいなと良さんは考えるようになりました。

 

 

しかし、長年職人として研鑽を積んできたお父さん、叔父さんに比べて、「やっぱり自分はまだ技術が全く足りていない」と感じることも多々あるとのこと。研磨の工程では、最後の光り具合が、自分と2人とで全く違うと感じ、何度もやり直し、行き詰まってしまうときもあるのだとか。そんな時は2人からコツを教わりながらもう一度取り組みます。昨日より今日、今日より明日とどんどん技術力を上げていけるよう、石と向き合い続ける日々です。

 

 

 

 

 

 

 

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