ここにしかできないペンションの新たな可能性で需要を引き寄せる

ここにしかできないペンションの新たな可能性で需要を引き寄せる

クラブリゾートハグ 外観

いくつかある香住の海岸の中でも美しい海岸の1つとして知られる佐津海岸、その近くで平成31年4月にオープンした3階建てのペンション「クラブリゾートハグ」。

運営するのは、今年、香住の冬を初めて経験する上田さんご夫妻。お二人が大阪市からこの地にIターン移住してこられたのは2018年のことでした。

 

 

―きっかけと決断

上田智喜さん

「毎日の通勤ラッシュとか、いわゆる『都会暮らし』を普通にしてたんですけど、2人でキャンプに行くうちに『静かな空間』とか、肌で感じられる自然とか、そういうところへの憧れを持つようになりました。」夫の智喜さんは勤めていた会社のある方から、このペンション運営の話を提案された時、「転職」としてはいいタイミングなのでは、と移住を決断。

「正直言って、城崎あたりまでしか知らなかったので、この話が来るまで香住は全く知らない土地でした。」大阪育ちという根っからの都会っ子、当たり前だった日常が、1つのきっかけと決断で激変し始めます。

「実際に住んでみて、海や夕陽がホンマにきれいで驚きました。来てよかった!って、その時に思いました」 同じ「夕陽」でも、電信柱が乱立し、コンクリートジャングルの建物の隙間から見える夕陽とは全く異なる、香住ならではの光景です。

上田裕子さん

 

「移住するのは、すごい悩んだんですけど、面白そうだし『チャレンジ』してみようって思いました」

Iターン者にとっては移住前の不安要素のひとつである「仕事」ですが、夫、智喜さんから「香美町でペンション経営をしないか」と話を聞いた時に、既に仕事が決まっていて「ゼロスタート」ではないことで安心したのと、実家の祖父が漁師をしていて魚食が日常的だったので、海の近くという香住と共通した点があり、新しい環境へも前向きに考えられたという奥さんの裕子さん。

 

 

 

―暮らし

「魚の種類がこんなに豊富だとは思わなかったです。大阪では売ってない魚もあるし、こんなに魚をたくさん食べることは今まで無かったです。」季節を身近に感じられる海辺ならではの暮らしが新鮮で刺激になっている。また、ご近所との距離感や、コミュニケーションも、苦労していることは今のところ思い当たらない。「ただ、気を付けてる事というか、当たり前の事なんですけど、地域の行事にはできる限り参加するようにしています。顔を出すと、そこでいろんな情報を聞けたり、教えてもらえたりもしますし。ただ・・・、その行事の多さに最初はビックリしましたけどね…」

佐津海岸

 

買い物や生活に苦労することは?との問いかけに、「今までは、すぐ近くにコンビニもあったし、無くなったらいつでも買いに行けたけど、ここは地域に1軒しか商店が無いので、そういう

わけにいかないですよね、買い物の仕方は変わりました。」今まで以上に、買わなければならないものは何かを考え、最低限のものを買うように、と認識が変化してきました。

「あと、2人ともお酒が好きなんですけど、飲みに行く場所や遊ぶ場所が少ないのが、強いて言うなら不自由なところかなぁ…。でも、それも、無いなら無いで来る前から覚悟があったので苦労は別にしてないです。逆に出費が減って助かってますよ。」

不便や不自由も覚悟の上ならば、案外楽しんで暮らせる場所になり得ることも。

 

 

クラブリゾートハグ 内観

―ペンション「Crab Resort HAG」(クラブリゾートハグ)運営

紹介されて初めて来た時はとても大きく見えた建物、自分たちで改良、修復しながら今の形に。「DIYとか全くやったことなくて、こっちに来て教えてもらいながら覚えました。時間はかかりますけど、やっていくうちに愛着が湧いてきて、アイデアも出てきました。」

クラブリゾートハグ 内観

 

エントランスの屋根や柱は遠くからでも見つけやすい、鮮やかな空色が施され、広々とした1階食事スペースはシックな雰囲気のカウンターや、広いガラス戸から差し込むあたたかな陽光もあってとても明るく、どこか家庭的な雰囲気も感じられる場所に。

2階の客室は落ち着いた色合いでまとめられ、ゆったりと過ごせそうな雰囲気で、くつろぎの空間が演出されています。しかも各種アメニティはもちろん、全室Wi-Fiが利用可能、SNSなどもフルに活用してもらえる環境も提供しています。「お客さんの気持ちになって改良していくことが基本だと思うので、やれるところから1個ずつって感じです。」内装も外装もとても素人仕事とは思えない丁寧な仕上がり。愛着が無ければできない仕事です。

 

 

カニ料理のイメージ

 

 

 

食事は調理師経験のある智喜さんのオリジナル、2人で協力しながら試行錯誤しながらの日々。

「間違えられやすいんですけど『クラブリゾートハグ』の『クラブ』は『倶楽部(Club)』ではなく『カニ(Crab)』の方なんです。やっぱり香住なので、カニ料理もしっかり出していきます。」

 

 

 

 

―将来

「この辺りにペンションってあまり無いので、やり方次第で面白くなるんじゃないかと思ってます。ここは海があるので釣りもできるし、土地もあるのでお米や野菜作りなんかもやっていきたいなぁって。お客さんと一緒にその日の食材を調達したりして、今までに無いような宿、ペンションにできたらと・・・」流行に流されず、地域にも愛着があるからこそ、可能性を探りながら「需要を起こす」ことも視野に。

上田智樹さん、裕子さん

 

 

「客室は大小洋間9部屋を2人でやってます。2人でできる範囲が今のところここくらいまでかなとは思ってるんですけど、来年くらいを目安に3階の和室3部屋を整備して、1フロアとしての貸切使用なんかもできそうでいいかなって。合宿とか説明会、研修なんかにも使ってもらえるような施設になればと思ってます」

3階には佐津の海が見渡せるベランダもあり、これからどんな進化を見せてくれるのかが楽しみな空間、そして何事にもひたむきで明るく、親しみやすい上田ご夫婦。香美町のホットスポットの1つになりうる予感です。

 

 

 

 

(著者:香美町町民ライター 池本大志)
香美町の海と地域で漁師として生きる

香美町の海と地域で漁師として生きる

季節ごとに豊かな魚介類に恵まれる、山陰有数の漁港・香住港。底曳き網漁や香住ガニ漁、定置網漁など様々な漁が行われています。海沿いには民宿や水産加工業者も多く、漁師町の風景が広がります。海とともに暮らすまち「香住」にIターンし、底曳き網の漁師として、漁師の妻として活動する膳所直樹さん、マリ子さんご夫妻に、漁師の仕事や香住での暮らしについてお伺いしました。

香美町の底曳き網漁師の働き方「大祐丸」の場合

(「大祐丸」ニギス漁の様子)

 

膳所直樹さんは2009年頃から底曳き網の漁業に携わるようになり、現在は40tの漁船「大祐丸」の船長を務めています。

「周りを見ていても、底曳き網の船頭はどんどん若くなってきているように思います。僕も30代ですが、同年代の方もどんどん増えてきている印象です」

「漁師」と一口に言っても、船によって働き方は様々です。「大祐丸」の年間スケジュールは9月頃からハタハタやマガレイの漁期を迎え、10月はアンコウやノドグロ、11月から1月は松葉ガニが全盛期を迎えます。2月から5月はホタルイカ漁が中心になり、6月から8月は網直しや船のメンテナンス期に入ります。季節に応じて獲れる魚介類が変わり、それにより生活リズムも変化。ホタルイカなどの日中に獲れやすいものの場合は、早朝3時から海にのりだして日中に網を打ち、夕方に帰港というスケジュール。松葉ガニ漁などの場合は満船になるまで船の上で過ごし、長ければ2泊3日ほどの漁になります。


(漁に向けて、底曳き網を引き出す様子)

 

船いっぱいに魚介類が獲れると、港で待つ奥様・マリ子さんに連絡が入ります。獲れた魚を船から競りをおこなう上屋へ運ぶ「浜揚げ」は、漁師の妻としての仕事。11月から始まる松葉ガニの季節にはこれにランク分けが加わります。カニのランク分けは漁港によって異なり、大きさ、身のつまり方、足の形や揃い方等によって130以上の種別に分けられます。1.4kg以上の成体で、見た目も美しく足も揃ったものは最上級の「香住PREMIUM(プレミアム)」のタグがつけられます。およそ3000枚にの1枚の割合でしか獲れれないまさにプレミアムなカニは、年々高値で取引されています。


(「大祐丸」カニ漁の様子)

「魚について何もわからなかった私ですが、今では水産加工場でも仕事をしています。主人が獲ってきたカニや魚をお客さんが楽しそうに買ってくれるのを見るのはとても嬉しいです。また、『浜揚げは辛い仕事』と地元の方から聞くこともありますが、実際やってみると魚についての知識も増え、楽しさを感じることも多くあります。」

海と隣合わせで生きる暮らしに手応えを感じるお二人ですが、初めは戸惑いも多かったといいます。

(浜揚げされたハタハタ【左】ノドグロ【右】)

夫婦ともに移住、戸惑いを乗り越えて香住暮らしを楽しむ

(膳所直樹さん)

直樹さんは豊岡市竹野町のご出身。祖父の代から竹野町で漁業を営んでいましたが、ご自身は学校卒業後、大阪にて別業種で活躍していました。大阪で出会ったマリ子さんとの結婚を機に帰郷。その頃ご実家は船の所属する漁港を香住に移していました。お父様に頼まれ、気軽な気持ちで漁に出始めたと直樹さんは言います。

「大祐丸は7人乗りの底曳き網の漁船です。始めは手伝いのつもりでしたが、父と一緒に現場に入ることで、経営など責任の重さを感じるようになりました。船頭になってまだ2年。漁場探しの経験が浅く、苦戦することもありますが、実践して積み上げて行くことで独自のノウハウを築いて行こうと思います。」


(膳所マリ子さん)

直樹さんとともに香住に移住したマリ子さんは、田舎暮らしの経験もなく、始めは戸惑いも多かったと言います。

「今は好きになったのですが、香住に来るまでは魚が嫌いで。魚料理の仕方もわからないし、知り合いもいないし、慣れるのには時間がかかりました。」

浜揚げや水産加工場の仕事を通し、マリ子さんは少しずつ海とともに暮らす生活に慣れて行き、最近では「香美町とと活隊」にも入隊、魚食普及の活動に精を出しています。

「お祭りでサザエ釣りの催しをするなどの他、会議にも参加することで香美町とと活隊の方たちが魚食普及に取り組む、その一生懸命さを実感しました。学校などの料理教室にも参加しますが、私はまだ勉強中なので『一緒に教えてもらおう』という気持ちでやっています。活動に参加することで出会いがあり、今ではどこに行っても知り合いに会うほどです。子どもたちの成長も地域の人が暖かく見守ってくれ、香住は本当に居心地がいいなと感じています。」マリ子さんは今、戸惑いを乗り越え暮らしを積極的に楽しんでいます。

 

海で働き地域にも飛び込むのが、暮らしを楽しむコツ


(浜揚げ後の競りの風景)

直樹さんが海に出ている間、陸で様々な活動に勤しむマリ子さん。そして漁師自身もまた、「陸での時間」が大事なのだと直樹さんは語ります。

「仕事は海の上で、同じメンバーで何日も過ごします。それだけだと日々に張り合いがなくなりがちです。時化(しけ)の時期には漁に出られないこともありますから、陸での生活をいかに充実させるかが鍵です。そのためには自ら地域に溶け込んでいくこと。夫婦ともに移住者で、香住のことは海のことしかよく知りませんでしたが、生まれてきた子どもたちにとってはここが故郷になる。それなら地元の祭りや行事に積極的に参加したいと考えるようになりました。」

地域をよりよく知るために直樹さんが門扉を叩いたのが香住青壮年会。香住区の様々な業種の若手が集まり、納涼祭りや節分祭りの企画運営など様々な活動を行う団体です。

「ほとんどが地元香住の方だったので、移住者が入っていいのかと思っていましたが、『よく来てくれたな』と温かく迎え入れてくれました。地域の中で会ったことのなかった人たちと話す機会が増え、香住の人のオープンな温かさを感じましたし、繋がりができて香住の良さを感じました。僕たちのように移住してくる人には、地域と繋がれる団体に飛び込んで行くことをお勧めします。」と直樹さんは笑顔を見せます。


(子どもたちも漁場の近くで過ごし、大人の働きを間近に見て育ちます)

 

 

「仕事でももちろん、張り合いを感じる時があります。獲ってきた魚を食べた人がすごく喜んでくれ、『魚の鮮度がよくて美味しい』『こんな魚食べたことない』と驚かれるのは嬉しい瞬間です。自分の獲った魚がどんなふうに消費者に届けられ、食べられてるんだろうと想像すると、社会に貢献できているやりがいを感じます。ただ毎日ルーティーンで魚を獲るだけなら行き詰まりますが、自分の獲った魚で社会に貢献しているビジョンが持てたら、もっと鮮度抜群のいい魚を届けるにはどうしたらいいかと創意工夫の気持ちになれます。」

仕事にプライベートにと、香住での暮らしを家族で満喫する膳所さん一家。陸での活動を充実させながら、今日も香住の海に向き合います。

 

小代のスキー文化で子どもたちの豊かな成長を促したい

小代のスキー文化で子どもたちの豊かな成長を促したい

香美町小代区のおじろスキー場は、初心者から上級者まで楽しめる、変化に富んだ多彩なコースが魅力です。このスキー場を拠点に、小中学生がスキー(アルペン・ノルディック)の楽しさを追い求め、技術を高めあうクラブがあります。西日本内でも強豪と言われる「おじろジュニアスキークラブ」のアルペン部監督・今井和希さんにスキーへの想い・修練を積む子どもたちへの想いをお伺いしました。

 
(今井和希さん)

 

自らの人生を豊かにしてくれたスキーを、地元の子ども達に

 

今井さんは、香美町小代区のご出身。物心つく頃にはスキーを始めていたといいます。

小代区では、小中学校までの間、冬期の体育授業でスキーが行われており、その日はすべての授業時間をスキー場で過ごすなど、文化として「スキー」が存在している地域です。さらにその中でも、スキーをより深く楽しみたいと希望する子どもたちは、「おじろジュニアスキークラブ」に入部します。今井さん自身もおじろジュニアスキークラブで研鑚を積み、全国大会にも複数回出場、大学卒業まで選手としてスキーに向き合い続けてきました。


(おじろジュニアスキークラブ 選手の滑走の様子)

 

「大学卒業後、好き放題やってきたスキーとは一線を画して大阪の企業に就職しました。一年間スキーに関わらない日々を送り、その張り合いのなさがとても苦しくて。帰省し地元でスキーをしたら『やはり自分にはスキーが必要だ』と改めて感じ、地元に帰ろうと決意しました。」

地元の小代区に帰るなら、もう一度選手としてスキーをするのではなく、おじろジュニアスキークラブにいるこどもたちにスキーの面白さを伝えたい、自分を育ててくれたスキークラブに恩返しがしたい。その想いから帰郷し、地元に貢献するため香美町役場に入庁。スキークラブでもコーチを務め、仕事とスキーの充実した日々を送っています。


(おじろジュニアスキークラブ 活動の様子)

 

おじろジュニアスキークラブで子どもたちが得る大きな成長


(おじろジュニアスキークラブ 夏の活動の様子)

おじろジュニアスキークラブアルペン部は、一年を通して活動していて、冬季は基本的に週三日、水・土・日で練習を行い、春から秋のオフシーズンは、週に一日走り込みや筋力トレーニングなど、冬に向けた体力づくりを行います。

活動が本格化する冬期は、子どもたちの冬休み期間を活用して長野県へのチーム単独合宿も行います。また、普段の平日はアップかんなべスキー場のナイターで、毎日のように滑り込みを行い練習を積みます。

「冬はスキー一色になり、子どもたちもコーチも休みはありませんが、似たような目標を持った子どもたちが集まってくるので、チームの士気がとても高くなります。コーチ・保護者に言われるからやるのではなく、『自分がやりたいからスキーをする』そういう子ども

たちの集団ですね。」


(おじろジュニアスキークラブ 集合写真)

 

チームは、小代区の子どもたちを中心に、神戸・姫路・大阪・岡山など遠方からの子どもたちも受け入れ、現在約40名のチームメンバーが属しています。中学卒業後もスキーを続ける子どもたちは、高校スキー部の部活動がない日には練習に参加してくれ、小学生から高校生まで幅広い年代が垣根を越えて交流しています。

「小学校から高校まで、同じような顔ぶれで育つ小代の子どもたちは、町外の方と関わる機会はめったにありません。一方で、スキーをしていると、全国各地、様々な年齢層の方々とコミュニケーションをとる機会が数多くあります。私も経験していますが、これは異文化交流に近いです。スキー技術を向上させることはもちろん、それだけではなくて、様々な文化の違いを学び、コミュニケーション能力を向上させることができるのもスキーの魅力です。」

 個人スポーツと言われるものの、一人での練習は難しく、一つのチームで同じ目標を持った者同士が切磋琢磨しあえるのがスキーというスポーツ。子どもたちは、スキーに多くの時間を投じる中で大きく成長していきます。

 


(おじろジュニアスキークラブ リフトに乗る子どもたち)

 

文化としてのスキーを広げたい

 

 おじろジュニアスキークラブに通う子どもたちにとって、今井さんはコーチの中でも特に年が近く、頼れるお兄さんのような存在です。

「はじめは遊びのつもりで山に来て、スキーを楽しんでほしいと思っています。楽しみながら打ち込んでいくうちに悔しさが芽生えてきて、強くなりたい!と思うようになっていって欲しい。目的は、『小代の山でスキーを楽しむ子どもを増やしたい』それだけです。その子たちが成長して、地元に戻ってくるきっかけとしてスキーがあればいいなと。今スキークラブにいる子どもたちが僕くらいの年齢になった頃、バトンタッチできるような循環が出来れば、小代にある『地域に根ざしたスキー文化』を継承していけるのではと思っています。」


(おじろジュニアスキークラブ 指導の様子)

 

今後は、おじろジュニアスキークラブをもっと身近に感じてもらうために、クラブ主催のスキー体験会などを企画する予定にしています。気軽に体験できる場を設けることでスキーを楽しむ子どもたちを増やしていきたいと考えています。

「アルペンスキーというスポーツは、始めるまでのハードルが他のスポーツに比べて高いと思います。まずは、体験していただくこと。そうすることで、必ず楽しさを分かってもらえるはず。今後も、小代のスキー文化を発展させていきたいと思っているので、県内の他チームとも協力しながら、子どもを中心にスキーに関わる人をもっと増やしていけたらなって思っています。」

子どもたちが楽しく地元のスキー場で滑る姿をこれからも見られるよう、子どもたちの指導とスキー文化の発展にこれからも取り組みたいと、今井さんは語っています。

 

 

  • 団体名
    おじろジュニアスキークラブ
  • 活動日程
    冬季(12月~3月の休日及び夜間)、その他(不定期)
  • 年会費
    10,000円(きょうだい2人目から5,000円)
  • 対象年齢
    小学校1年生から中学3年生
  • お問合せ先
    090-6267-8396 おじろジュニア 今井
香住・柴山から但馬の魅力を伝えたい

香住・柴山から但馬の魅力を伝えたい

 

香住区柴山港を目の前に臨む「お宿 まる屋」。海に面した立地にありながら、ロビーへと続くアプローチは、木々の緑に囲まれた非日常的な空間。地元の設計士が手掛けたお宿は、メゾネットタイプや和洋室のお部屋など、お客様がゆったりくつろげる工夫に満ちたスペースとなっています。併設のレストラン「桜桃(ゆすらうめ)」では、地元の旬な食材を使用したメニューを提供しています。「お宿 まる屋」の3代目として、料理を中心としてお客さまをもてなす藤原啓太さんから、これまでのご自身の歩みや香住をはじめとした地元の魅力についてお伺いいたしました。


(建物へ続くアプローチ)

 

「お宿 まる屋」を支えるための大阪修行にて

藤原さんは宿泊業を営むご両親の背中を見ながら育ちました。高校卒業後、家業の手伝いをするうちに後継への想いが高まってきたといいます。


(「お宿 まる屋」 ロビー)

旅館を継ぐなら料理の勉強をしたい。その想いから、修業をするため22歳で香美町を離れました。当時すし屋に勤務していた同級生を頼り大阪へ。居酒屋で約1年、日本料理店で約9年の修業を積みました。

「修行させていただいた日本料理店は、大阪で何店か食べて回った中でも最も印象に残ったお店で、直接働かせてくださいとお願いしました。席数がそこまで多くないお店だったので、下ごしらえから盛り付けまでトータルに関わらせていただいて、とても勉強になりました。」

大阪の生活では、地元への印象が変わる出来事もありました。


(藤原啓太さん)

 

「大阪はお店がたくさんあって、夜でも明るくて、便利で……、正直はじめは田舎出身であることに劣等感を感じていました。ですが、お客様に『どこから来てるの?』と聞かれて故郷の香住のことをお話すると、どのお客様も『いいところだね、空気が美味しいね、食材が美味しいね』といいことばかり仰って。外から眺めることで、故郷の良さが改めてわかりました。」

学んだことを基に地元でのつながりや経験も積めるよう、10年で修行の区切りをつけて2016年に帰郷。一度外に出ることで、藤原さんは新しい目線で地元を見られるようになっていました。

 

お宿とレストラン、Instagramで但馬の魅力を発信したい


(お昼のミニ会席 小鉢の一例)

「大阪の日本料理店でお客様によく聞かれたことは、城崎温泉や湯村温泉、竹田城跡のことや但東町にある行列ができる卵かけご飯のお店など、香住だけでなく但馬全域のことについてでした。聞かれるうちに『自分は地元のことを全然知らない』と痛感し、帰省の際にはお客様にお話できるよう、地元の知らなかった場所に積極的に出かけました。」


(ランチメニュー 手打ちそばセット)

帰郷後、藤原さんが真っ先に始めたのがInstagram。自身の住む場所を知ってもらいたいと毎日1枚ずつ発信し続け、2019年9月の時点で約1,200枚を記録しています。

「はじめは大阪に住む友人たちに知ってもらいたいという気持ちでしたが、徐々に但馬に住んでいる友人たちからも反応をもらえるようになってきました。『近いとこにあるけれど知らなかった。行ってみたい。但馬にこんなところがあるんだ。』という反応をもらえて嬉しかったですし、自分自身、発信を通して但馬の魅力をより知ることができました。」

 


(藤原さんのInstagramより。香美町小代のうへ山の棚田についても発信)

身近にあっても知らなかったことに自ら出会い、「いい場所だね」とフィードバックを受けることで、故郷が「本当に大好きな場所」「多くの人に知ってもらいたい場所」として確かな存在感を持つようになりました。

「香住はもちろん、但馬の魅力を伝えたいという想いがあります。最近積極的に発信しているのが、城崎温泉の伝統工芸品の麦わら細工です。城崎温泉では、昔から親しまれてきた麦わら細工ですが、正直、香住においてはあまり馴染み深いものではありません。しかし、長い歴史の中で作り上げられたこの素晴らしい品を沢山の方に伝えたいと思うようになりました。そこで、ただ撮影して発信するだけでなく、自分のフィールドに持って来られないかと、職人の方にお願いして器を作っていただきました。ゆったりとお食事の時間を楽しんでいただける演出として、ご好評いただいています。」


(麦わら細工の器)

 

お客様に喜んでもらえるおもてなしをこれからも

心を尽くしてお客様をおもてなしすることで、但馬での滞在を心ゆくまで楽しんで欲しいと語る藤原さん。

「小さいお宿なので、その分目の届く範囲でできる、距離の近いおもてなしができたらいいなと思っています。地元の魅力を知っているからこそ言える、思い出に残るお土産屋さんの紹介などを行うこともその一つです。」


(和洋室・客室の一例)

お客様からの言葉に、地元への愛情が更に深まることも。

「柴山といえばカニですが、カニをたくさん食べてこられたお客様に『ここのカニはなぜこんなに美味しいの?』とお声をかけていただけたことがとても嬉しく印象に残っています。地元だからこそ、柴山の漁師さんやカニの水揚げ・選別に関わる地域の方を知っているので、皆様の顔が浮かんで感謝の気持ちが湧いてきます。主に父親が行っている競りにも同行し、そこで初めて出会う食材もあり、競りに行くたびに驚かされています。カニ以外にもお客様に『おおっ』と喜んでいただけるような食材がありますので、ご提供することで知っていただければと思っています。」

一度離れたことで改めて知ることができた、底知れない地元の魅力を、お仕事と発信で多くの方に届けるべく、藤原さんは見識を広げながら腕を磨いています。

「人みな使命あり」自ら学び地域を創る人材を育む

「人みな使命あり」自ら学び地域を創る人材を育む

「地域に学び、地域と協働し、地域になくてはならない高校をつくる」は、香美町村岡区にある、兵庫県立村岡高等学校の学校教育目標です。校舎正面には「人みな使命あり」の文字が刻まれた石碑があり、生徒たちはここで地域に深く根ざし、使命を持った地域の一員として学びを重ねて行きます。地域活性化に向けた特色ある村岡高校の教育プログラムについて、大垣喜代和校長先生にお話を伺いました。

全国募集の特色類型・地域アウトドアスポーツ類型

村岡高等学校は兵庫県の第5学区(豊岡市、美方郡、養父市、朝来市)に所属。香美町内・近隣市町の生徒たちの進学先として選ばれているだけでなく、平成26年新設された「地域アウトドアスポーツ類型」は兵庫県立高校では初めて全国から出願することが可能になりました。
地域アウトドアスポーツ類型は、「地域創造系」と「アウトドアスポーツ系」の2つのコースに分かれ、入学時に生徒の希望に沿って振り分けられます。それぞれどのようなことが学べるのでしょうか。

地域創造系

地域創造系の生徒は1年生の地域学入門の授業で、まず地域をよりよく知るための基礎的な知識を学びます。2年生からは普通科の授業を受けながら地域を知るための聞き取り調査などを行い、地域の課題を研究。さらに3年生では、課題解決の方法を卒業時に冊子にまとめ、地域に向けて発信することを学べます。学びの中で得た地域の人と深い交流と、人前で自分の意見や課題解決の案を述べる機会から得た自信は、大学入試でのアピールポイントにもなります。国公立大学や有名私立大学へ進学し、地域での学びを強みにして社会で活躍していく事が目標です。


(地域創造系の生徒が卒業時に制作する地域課題解決提案の冊子)

アウトドアスポーツ系

アウトドアスポーツ系の生徒は一年生の地域学入門の授業で指導者論、トレーニング理論、栄養学など外部講師からスポーツに関わる基本的な学習をします。2年生からは冒険教育、アウトドアスポーツ、地域スポーツ、スポーツ実践とより実践的な学びに入ります。冒険教育ではツリーイングやロッククライミングなど冒険要素の強いスポーツを実践し、また地域で生涯楽しめるスポーツとしてゴルフやスキーなどの実習も行います。体育館に併設されたトレーニングジムでウェイトトレーニングの基礎理論も学べたりと、スポーツに興味がありスポーツを通して地域を元気にしたいと考える生徒にとって魅力的な学びが多くあります。

全校生徒で関わる「地域元気化プロジェクト」で「なくてはならない高校」に

このように、地域アウトドアスポーツ類型では特色ある学びを得ることができますが、総合的な学習の時間「地域元気化プロジェクト」には類型に関わりなく全校生が関わります。地域で開催される「みかた残酷マラソン全国大会」や「村岡ダブルフルウルトラランニング」では村岡高校の全校生がボランティアで関わり、企画や運営を行います。


(「みかた残酷マラソン全国大会」にてスタッフとして活動する村岡高校生)


(「みかた残酷マラソン全国大会」にて演舞でランナーを応援する村岡高校生)

「みかた残酷マラソンでは、約3,000人と、小代区民より多いランナーが来ます。大勢の方を受け入れるために、地域の方や実行委員だけでは難しいおもてなしを本校の生徒がお手伝いさせていただき、『村高生(村岡高校の生徒)が来てくれるから頑張れる』といっていただけています。ランナーの方も地域のおもてなしや村高生の頑張りに感動されるからこそ、みかた残酷マラソンは7割という高いリピーター率を記録しているのだと思います。」


(大垣喜代和校長先生)

地域元気化プロジェクトは民芸班、吹奏楽団、食文化班、環境班、地域福祉班の5つのグループに分かれ、それぞれに地域と協働した活動を行います。民芸班では伝統工芸の紙漉きを行う班と先述のマラソン大会の応援時などに演舞を踊る班があります。吹奏楽団は地域のイベントでの演奏のほか小学校で楽器を教えるなどの活動を行います。食文化班は地域の食材を生かしてメニュー開発を行い、環境班は、役場の農林水産課や北但西部森林組合と協力して森の健康診断や木の駅プロジェクト行ったり、地元団体「武勇田(ぶゆうでん)」と協力して棚田の保全活動を行っています。地域福祉班は地域の、特に高齢者や子どもの支援策を検討・実践したり、小規模集落の魅力を発見・発信するために小規模集落への聞き取り調査を行います。
「このような、地域と一体になった教育の支援を行ってもらうために、香美町地域おこし協力隊の方に『教育コーディネーター』として入っていただいております。」


(教育コーディネーターとして活動する、香美町地域おこし協力隊の房安晋也さん)

地域の方や地域おこし協力隊員に支えられながら取り組んだ活動を地域に還元する場もあります。毎年10月に開催される村高フォーラムでは地域住民を招き、活動の報告や議論の場を設け、次年度への取り組みへとつなげていきます。


(村岡高等学校 グラウンド)

地域活性の使命への第一歩・オープンハイスクール

「本校で学んだことをもとに、大学等で活躍し、その後地元に戻ってきてそれをまた還元してくれるのも嬉しいし、本校での経験を生かして、色んな所で地域づくりをしてくれることで日本全体の地域を創ってくれるような人材を育てられたらと思っています」
スポーツや地域活性など、普通の学習だけでなく特色を持った3年間を過ごしたいと考える生徒や保護者から注目されている村岡高校ですが、2019年度は8月3日に第1回、10月5日に第2回のオープン・ハイスクールが開かれます。
「オープン・ハイスクールでは、数学や英語などの授業はもちろん、アウトドアスポーツや地域創造などの授業も体験できます。類型についての詳しい紹介や部活動見学もできますのでぜひこの機会に村岡高校の様子をご覧ください。」(※詳しい情報はhttps://www2.hyogo-c.ed.jp/weblog2/muraoka-hs/?p=1244

「全国募集をすることで、違う地域から生徒が来ることにより、学区内の子どもたちにも良い刺激や交流の機会になっています。遠方の生徒は下宿から通学することになりますが、小規模校で教師との距離も近く、生徒と教師の関わりが密なので、何かあれば教師に相談しやすい環境にもつながっています。」
「人みな使命あり」を掲げる村岡高校。全校生徒で地域と協働し、地域と密着して得る学びや、類型に応じた特色あふれる学びなど、村岡高校ならではの教育が、自ら考え、行動する生徒の成長を促します。

※下宿先になってくれる地域の方、香美町に移住して下宿先を運営したいという方を募集しております。

地域のサードプレイスを作り、若い世代の日常をもっと楽しく

地域のサードプレイスを作り、若い世代の日常をもっと楽しく

香美町のまちづくりに、若い人の声を反映させたいという思いから生まれた会議、「香美町若者まちづくり懇話会」。町内の20代から40代の方を中心とした集まりで、月に一度まちづくりをテーマに意見を出し合い、2年間かけてとりまとめたものを提言書として町に提出しています。現在の具体的な活動内容や「香美町若者まちづくり懇話会」の目指すものなどを、会員の正垣亮治郎さんにお伺いいたしました。

 

地域の方の「ありがとう」が大きな喜びに

正垣さんは香美町の村岡区出身。村岡高等学校を卒業後、県外の大学に進学しましたが、「卒業後は地元香美町で働きたい」と進学時から思いを定め、2017年、香美町役場に就職しました。正垣さんが地元での就職を志したことには、どんな背景があったのでしょうか。

(正垣亮治郎さん)

 

「高校在学中に、吹奏楽部員として地域の施設やマラソン大会等で応援の演奏をする機会が多くありました。地域の方に喜んでいただけたことがうれしく、またこのまちに帰ってきたいと思うようになりました」

高校生として地域と深く関わるうちに地域への愛着が高まるからか、Uターンする同世代も少なくないのだとか。

「同級生も結構帰ってきています。でもその反面、町内に住んでいる知らない同世代の人と知り合う機会はあまりないなと感じます。例えば、ふらっと立ち寄れる居酒屋や、若者が集まる場所があれば、出会う機会も増えるのかなと」

新しい出会いとコミュニケーションの場があればと思っていた正垣さん。それを自分たちの手で作るきっかけとなったのが「香美町若者まちづくり懇話会」でした。

 

「よりみち書房」で「aoite187」を若者のサードプレイスに

(aoite187 外観)

 

「香美町若者まちづくり懇話会」のメンバーは、1~2年ごとに更新されます。これまで「香美町若者まちづくり懇話会」の活動としては、観光マップに載らないようなおすすめスポットをまとめた「香美町ええとこマップ」の作成や、ジオパークの風景と背景を遊びながら学べる「香美ジオかるた」の作成提言などを行ってきました。

「今回の活動で何ができるかと話し合った結果、『サードプレイス』として、自宅でも職場でもない第三の居場所を町内に作れたら良いなと考えました」

ここに来たら人に出会えて、ほっとできる。そんな空間を作りたいという正垣さんたちの拠点の一つが、香美町香住区矢田にあるレンタルスペース「aoite187」です。会議や集まりで使用する他、月一回程度、ブックカフェイベント「よりみち書房」を開催し、地域の方が立ち寄りお茶をしながら読書や懐かしいゲームなどを自由に楽しむ場所を設けています。

(「よりみち書房」開催時の「aoite187」)

ただ場所を提供するだけでなく、興味を持って来てもらえるよう、また共通の趣味を介して新しい出会いが生まれるよう、テーマを決めたイベントも開催。7月には正垣さん自身もメンバーとして所属するバンド仲間を招き、ライブや楽器の演奏体験などを行いました。

「香住高校も近いので、高校生も大歓迎です。村岡高校からは少し距離がありますが、『大人に車を出してもらえるよう頼んでみよう』と思ってもらえるような、魅力ある空間づくりややイベントについて工夫していきたいと思っています」

(「よりみち書房」ではゆったりと過ごす若者たちの姿が)

 

SNSを通じて「よりみち書房」の存在を知り、懐かしい知り合いとの再会や新しい出会いが訪れるなど、「香美町若者まちづくり懇話会」の活動は、徐々に地域に浸透しています。

 

 

「香美町若者まちづくり懇話会」の活動で、香美町に暮らす若者の日常をもっと豊かに

(「aoite187」の向かいには香住高校)

 

「香美町には面白い人がまだまだたくさんいると思います。音楽だけでなく、料理、釣り、アニメなどなんでも……得意なこと、好きなこと、ジャンルごとに集めていったら面白いことができそうだなと感じています。地域で点々と行っている活動もギュッと集めて、その中で知らなかった人と知り合えるなど、そういう出会いの場が提供できたらと思います」

自身が香美町に帰ってくることに迷いがなかったように、若い世代もいい出会いに恵まれることで、自然と帰郷への思いが芽生えるのではないかと語る正垣さん。

(2019年7月に開催された音楽イベントの様子)

「高校の吹奏楽部の活動でもそうでしたが、地域の方が『ありがとう』と言ってくれることが大きな喜びでした。人に喜ばれることはなかなか難しいですが、自分の好きな音楽で人に喜んでもらえたという体験は、生きがいに直結するものだと考えています。学生や若い人も好きなことで人と繋がれたら『自分はこれで良いんだ』と自分を肯定できるし、地域に居場所も感じられるのではないでしょうか」

香美町に住む若い世代が、日常生活への満足度を更にあげていくためのサードプレイス。出会いのある居場所、自己表現の叶う居心地のいい空間づくりに、今後も正垣さんたち「香美町若者まちづくり懇話会」のメンバーは取り組んでいきたいと語っています。。

余部の歴史と新しい魅力を道の駅・空の駅から発信!

余部の歴史と新しい魅力を道の駅・空の駅から発信!

 

1912年の開通以降、香住で暮らす人の生活の基盤でありつづけた余部鉄橋。高さ41.5mの鮮やかな赤い鉄橋は、交通の便としてはもちろん、写真撮影や観光のスポットとして幅広く親しまれてきました。現在は防風壁を備えたコンクリート製の橋梁に架け替えられ、旧橋梁と同じく空を行き交うような列車の風景が楽しめます。橋梁を臨む橋下のスペースに2012年にオープンしたのが「道の駅あまるべ」です。地元から観光客まで多くの方が楽しめる道の駅あまるべの魅力と余部の歴史について、駅長の川本博文さんにお話を伺いました。

(余部橋梁下にある道の駅あまるべ)

 

余部鉄橋の歴史と、川本駅長のふるさとの思い出

川本さんは余部生まれの余部育ち。仕事の都合で香住を離れた後Uターンし、2019年4月に「道の駅あまるべ」の駅長として着任しました。

(道の駅あまるべ 駅長 川本博文さん)

 

「鉄橋があった子供の頃と、風景は大きく変わりました。2010年に橋梁が架け替えられてから、2012年に道の駅あまるべが開業し、2013年には余部鉄橋『空の駅』が、2017年には空の駅への直通エレベーターの『あまるべクリスタルタワー』も建設され、リピーターのお客様からも『来るたびに風景が違うね』と声をかけていただきます。」

余部鉄橋の歴史はまさに香住に住む人のインフラの歴史でした。余部鉄橋が開通したときには餘部駅はなく、鉄道の利用者は列車の合間を縫って余部鉄橋を渡り、隣の鎧駅まで歩いたといいます。1959年に餘部駅が開業してからは駅までの山道を登りました。地域の人の通勤・通学を支え続けた鉄橋は、駅長の川本さんにとっても生活の一部でした。

(余部クリスタルタワーと、旧橋梁の橋脚)

 

「以前は風速20m/sで運行規制がかかりましたが、現在の橋梁になってからは風速30m/sまでは運行できるので、運休が減り列車がスムーズに運行するようになりました。鉄道ファンの方が列車が来る時間を見越して写真スポットでカメラを構えている様子もよく見られます」

 

地域の人達のバックアップを受ける美しい景観の道の駅あまるべ

 

(余部鉄橋「空の駅」から海側を臨む風景)

 

「子供の頃は景色を意識して見ることは少なかったのですが、余部に帰ってきて改めて見ると、春の新緑や秋の紅葉と橋の風景が本当に美しいことを実感します」

新橋梁に架け替えられてから、JR餘部駅側の橋脚が3本現地保存され、展望施設として生まれ変わったのが2013年にオープンした余部鉄橋「空の駅」。トワイライトエクスプレス瑞風などの写真映えする列車は特に人気で、季節ごとに変わる風景を追いかけ、お客様が何度も訪れるスポットです。余部鉄橋「空の駅」から見える海や山も圧巻ですが、夜になると漁火が美しく見え、また海側から見たクリスタルタワーのライトアップも川本さんがおすすめするポイントです。

(余部鉄橋「空の駅」ではかつての線路も保存されている)

 

道の駅あまるべは、バスツアーなどの団体の方が写真撮影や買い物・食事のために訪れる人気スポットです。また、余部鉄橋「空の駅」駅長のケヅメリクガメの『かめだそら』ちゃんのお目見えタイムもお客様に好評です。1日3回、概ね9時30分から10時30分に朝食、13時から14時が駅長業務としてのお散歩、16時から17時が夕食となっており、ゆったりした愛らしい動きに癒やされます。

 

 

『かめだそら』ちゃんの名付け親は地元の幼稚園児です。また、2019年に道の駅あまるべの外壁に新設されたそらちゃんをモチーフにした時計からは、一時間おきに幼稚園児が歌う童謡「うさぎとかめ」が流れます。

(道の駅あまるべ外壁にある、そらちゃん時計)

 

そして道の駅あまるべは、観光客だけでなく地元の方が日用品を買いに来るなど、地域の方の暮らしに欠かせない場所でもあります。

「道の駅あまるべは、地域の方から本当に愛され、支えられています。よく買い物に来てくださるだけでなく、花壇の草とりや公園全体の掃除など、従業員だけでなく地元の方もが担ってくださっていて、助けていただいています。地元からの温かい声を受けていますので、感謝の気持ちを込め、地元の方から商品のリクエストにはお答えできる範囲で品揃えをするようにしています。」

 

 

ランチ、お土産…新しい魅力を続々発信!

(道の駅向かいに旧橋梁の展示も)

 

多くの方から愛される道の駅あまるべ、余部鉄橋「空の駅」。おすすめの楽しみ方や人気商品を川本さんに伺いました。

まず、お客様に人気があるのが、地元産の野菜。また余部鉄橋の鋼材を使ったペーパーウェイトなど、余部ならではの商品は観光客のお土産にも人気です。

(道の駅あまるべ限定の余部鉄橋鋼材グッズ)

(余部ならではのおみやげコーナーも ※消費税の改定にともない、商品価格が変わる場合がございます)

 

「余部鉄橋の歴史を知れる情報コーナーで有意義な時間も過ごしていただけますし、レストランは地元の魚や野菜にこだわり、定食メニューをご用意、観光に来られた方にご好評をいただいています」

(定食「鉄橋御膳」。季節によってメニュー変更有)

 

「一つ一つ魅力を増やしていくことで、一度来た人が『また来ようね』とお友達を連れて来てくれるような場所にしていきたい」と意気込みを語る川本さん。余部の魅力をこれからも様々に発信していきます。

 

  • 店名
    道の駅あまるべ
  • 所在地
    兵庫県美方郡香美町香住区余部1723-4
  • TEL
    0796-20-3617
  • 営業時間
    9:00-18:00 ただし7月・8月は9:00-19:00
  • 定休日
    なし
  • web
海産物、豊かな海、人、香住の魅力を広げたい

海産物、豊かな海、人、香住の魅力を広げたい

旧・老舗料亭「岡見亭」。香住海岸を一望できる絶好のロケーションにあり、木造平屋の建物の中は広々としたスペースです。2018年、この絶景スポットがICTオフィス・レンタルスペースとして21年の時を経て復活しました。香住の質の高い海産物などを多くの人に届けるためオープンした、ネットショップ「舫(もやい)」をはじめとし、ここが新たに人と人をつなげるスペースとして生まれ変わったのは、Iターンをしてきた池本大志さんがこの場所に出会ったことがきっかけでした。


(池本さんのオフィスのあるレンタルスペース岡見 外観)

 

質の高い海産物と香住の人の人柄に惹かれて

池本さんは大阪府高槻市在住時に自然食品を扱う団体に所属し、配達、企画など幅広い分野で経験を積みました。企画の仕事の中では海産物のバイヤーとして活躍。香美町の中でも、日本海に面し水産業が盛んな香住はその取引先の一つでした。香住の質の良い海産物と関わるうち、「いつか魚の美味しいところに住みたい」という気持ちが高まり、思い切って2017年1月に香住に移住しました。


(池本大志さん)

 

「香住の人は、優しく気前のいい人が多いという印象。この人達と繋がりながら、質の高い海産物を欲しい都市部の人に届ける仕事ができたらと考えました。」

香住での暮らしは、都会の暮らしと大きく違いました。まず、季節によって漁師さんの働き方が全く変わり、まちが全く違う風景になること。漁がないときは別の仕事をしながら、季節に合わせて暮らす香住の海に生きる暮らし、果敢に漁業にチャレンジする強い精神に、多くのことを学び、多くの人に香住の人や海産物と出会って欲しいという思いがますます強まりました。

香住の海産物や作品を多くの人に届けるネットショップ「舫」オープン

香住に移住し、まずは現場を知りたいと考えた池本さん。水産加工の会社に所属し、情報発信を中心に海産物を届けるべく活動していました。そんな池本さんに訪れた第2の転機もまた、人・場所との出会いでした。

「ものづくりをしている方々と繋がり、海産物だけでなく、ここで出会えた人が作っているもの、自分がいいなと思えたものを集めてセレクトショップをできたらと考え出すと止まらなくなって」

ネットを使ってセレクトショップを開くことを構想し、拠点を探していた池本さんは、香美町のすすめるICTオフィス開設支援の候補地だった「旧岡見亭」と出会います。

「景色も物件も素晴らしい、ここをオフィスにできるというのは、まさに千載一遇のいい話を頂けたなと思いました。だからこそ大切に使いたいと強く思いました。」


(レンタルスペース岡見から臨む海)

 

所有者の方たち向けてのプレゼンを行い、旧岡見亭を使用できることになった池本さん。バイヤーとして培った目を活かし、香住の海産物や手作り品などをセレクトしたネットショップ「舫」を開設しました。「舫」の由来は、「(海産物や作品を)提供する人と、受け取る人を結びつけたい、つなげたい」という思いから。ネットショップ「舫」が、サービス精神が豊かで、もてなし上手な香住の人と、クオリティの高い海産物を求める人との出会いの場になることを今後の展望としています。


(ネットショップ「舫」で取り扱う、香住、柴山港で水揚げされる甘えび。鮮度抜群の船上凍結です。)

「こんな素晴らしいスペースを、自分たちだけで使うのはもったいない」という気持ちから、オフィスとしている旧岡見亭を、「レンタルスペース岡見」として、ヨガやギャラリー、食事会などに使えるフリースペースとして提供しています。また、海を眺めながらゆったりコーヒーなどのドリンクを楽しめるカフェも開設。気軽に立ち寄れるスペースになっています。

地域の人が立ち寄ってホッと一息ついたり、ギャラリーとして自分の作品を展示するなど自己表現の場として使ったり。今後は飲食も含めたイベント運営も視野に入れ、「ここで出会った人が交流して何か新しいことが生まれる場であれば」と考えています。


(レンタルスペース岡見 素敵なバーカウンター)

漁業以外の地域産業「海上タクシー」を応援したい

 


(かすみ海上GEO TAXIの運転手のお一人 荒木 則雄さん)

 

 

旧岡見亭から見える海は、2019年5月にスタートした「かすみ海上GEO TAXI」のコースとなっています。香住海岸は、ユネスコ世界ジオパークに認定されている山陰海岸国立公園の中心地。かすみ海上GEO TAXIではなかなか見られない絶景スポットを小型船で巡ります。

海岸からは計り知れない自然の産物、岩や波が作り出す洞窟のような場所、美しく透き通った海水など、たくさんの見どころに感動間違いなしの遊覧を終えた後、レンタルスペース岡見から海を眺め、ゆったりと素敵な体験を振り返るのもおすすめの過ごし方です。

池本さんもこの事業を応援していて、「香住はカニなど、冬の仕事はもともと多くありますが、海上タクシーが始まることで漁師さんの夏の仕事ができると知り、地域の新しい事業として応援したいと強く感じました。香住はジオパークの中でも中心地なので見どころがとても多く、ぜひ長時間のクルーズを楽しんでいただきたいです。」と話します。


(海上タクシーから見るレンタルスペース岡見)

 

長年海に暮らし続けてきた漁師さんだけが知る、穴場絶景スポットに行けることはもちろん、香住の人が持つ強く優しい人柄に触れ、香住の海を知り尽くしている漁師さんだからこその詳しい解説も味わい深く楽しめます。

「食文化」としての香住の海産物と、それを生み出す広く豊かな海、それに携わる人。全てを結びつける池本さんのこれからのご活躍に期待が高まります。

 

石材加工を通して見る村岡、Iターン者として見る村岡

石材加工を通して見る村岡、Iターン者として見る村岡

香美町村岡区の長須集落にある「中島石材店」。技術力に定評があり、地域の方から慕われ続けている石材店です。技能士の中島雄大(ゆうだい)さんは、村岡生まれの村岡育ち。一度故郷を離れるも、Uターンして家業であった石材店で活躍しています。生まれ育った地域に戻り、働く中で日々感じることや気づいたことをお伺いしました。

家業を営む自分の姿が見えた

 

「始め石材店を継ぐつもりは全くありませんでした」と語る雄大さん。高校2年生のときの進路希望でも、「都会に出てみたい、違う世界を見てみたい」という思いから地元を離れた大学進学を希望していました。

「その時に親に『やりたいことが明確にないなら進学させる気はない』と言われ、それならどうしようかと考えたときに、初めて小さいときから来ていた石材加工の現場についてのイメージが湧くようになりました」

 

それまでただ「家業」として見ていた石材加工に、将来の自分の仕事像が見えてきた雄大さんは、日本三大石製品産地でもある愛知県岡崎市で5年間修業の日々を送ることになりました。昼間は仕事、夜は石材加工の勉強と忙しく充実した日々。さらに技能士大会へ向けての練習も重ね、平成25年の技能五輪全国大会ではグランプリを受賞するなど、技術力を極めてから、故郷に帰ってきました。

 

 

地域に根ざすまちの石材店「中島石材店」としての誇り

 

高校を卒業するまではただ住んでいる場所という印象だった村岡ですが、帰って来て働くことで、地域が抱える課題も見えてきました。20代の雄大さんが肌で感じるのは同年代の少なさです。

「同級生にも帰りたいと思っている人はいますが、その人たちの話を聞いていると、こちらにはしたい仕事が見つからず、したい仕事ができる場所で暮らしているという印象を受けます。石材加工の仕事が好きだと思えて、生まれ育った場所で働けているのは幸せなことだと感じています」

 

車社会であることなど、不便さは否めない環境ですが、「その分一人ひとりに責任と重みがあり、一人ひとりが大切にされているし、自分自身が地域の課題に向き合わなければならないと感じています」

村岡区や小代区中心に発注を受けている中島石材店。墓石や庭灯籠はもちろん神社仏閣から依頼に応じた製作を行っています。

 

「国内加工、自社加工にこだわって、お客様のニーズに答える石材加工をしています。石は腐るものではなく、残り続けるもの。地域の方から長く大切にしていただけるものです。実際建てた墓石に、手を合わせている方を見ていると、ますますキチンと作らなくてはと身が引き締まる思いです」

地域の一員として、使命感を持って石材加工の仕事に勤しむ雄大さん。現在は一児の父として、育児にも携わりつつ、日々の暮らしを楽しんでいます。

地域おこし協力隊から、結婚。一児の母として見る村岡

 

奥様の絵里奈さんは愛知県の刈谷市から地域おこし協力隊として香美町へ。村岡高校での高校支援教育コーディネーターとして活動していました。村岡高校では総合的な学習の時間に地域元気化プロジェクトで地域活性化に向けた活動を行ったり、国語・数学など通常の学習だけでなく、地域に学び地域に貢献する人材を育成することに力を入れたカリキュラムなどが組まれています。

「中学校では地元の知り合い同士の関係だった生徒たちに、他県から入学した生徒が合流することで、地元の生徒たちが刺激を受けている印象をもちました。町内に住んでいる子どもの数が少ないので、自分の意見を主張することが苦手なのではないかというイメージがありましたが、意外と個性にあふれていて、志を持った生徒が多いなと感じました」

(絵里奈さんが高校支援教育コーディネーターとして活動した村岡高校)

現在雄大さんと結婚し育児に専念している絵里奈さんですが、暮らしの中で、買い物や医療など、選択肢の少なさを感じることもあるそうです。

 

「いろいろなものを地域に循環させるようなこだわりのある新しいお店や施設ができたらと思います。やはり、若い方が少ないので、今後地域に生活や仕事を楽しんでいる、『かっこいい大人』がどんどん増えて、若い世代が残りたいな、帰ってきたいな、役に立ちたいなと思えるようなまちになってくれたらという願いがあります」

この地域で叶えたいことはたくさんあり、育児の傍らで地域の展望を考えることもあるという絵里奈さん。地域に根ざした職業で地に足をつける雄大さんとともに、このまちのこれからの力となる若い世代として、この場所で自分たちができることを熟考しています。

(中島絵里奈さん、雄大さん、1歳になる大里くん、愛犬ダナとともに)